「ちくしょう…なんで俺は…!何が先生だっ!
アムちゃんに何一つ肝心なことを教えられな
かったくせにっ…!!」
ダンッ、と両の拳を床に叩きつけて。
ソーマは慟哭していた。
「ソーマ…」
普段おちゃらけてはいても、その根底はクールで通しているはずの彼が流したくやし涙。
彼を良く知るシーガルですら、その光景は衝撃だった。
「おまえ…本当に…」
「そうだよ、本気さ。
恥ずかしながら、一目見た時からマジ惚れしたんだよ、あの子に。
一緒にいたいと思った初めての女なのに…それすら守れねぇってのは…堪えるな…」
「…………」
その言葉を聞き、ケイがふと遠くを見るような表情になる。
「こうなったら、俺が――!!」
「無茶言うな!!
リュ―カーってのはそうそうホイホイ使えるもんじゃないだろ?!」
リュ―カー…簡単に言えば、一瞬で遠い場所と場所をつなぐテクニックである。
イメージを習得するのが難しく、更にかなりの精神力を消費する為にその使用はフォースのみに制限されており――ソーマほどの力を持つフォースであっても使えるのはせいぜい1回。1往復しか出来ないのだ。
しかも、相手の座標が分からない限りは移動することは出来ない。
先のエレクトリック・ジャマ―の影響か、端末を通してウィル達との連絡も取りずらくなっている今の状況ではどうしようもない。
「このまま見殺しにしろってことか?!」
「そこまでは言ってない!!
だが、このままじゃ俺達も巻き込まれるぞ!」
「クゥッ……!!」
血が出るほどに唇を強く噛み締めるソーマ。
「これ、使いなさい」
「…ケイ…さん?」
ポイッと放り投げられた端末機器を見て驚いた表情でケイを見上げるソーマ。
「ケイでいいわ。
その端末は軍仕様だからギリギリで通話できるはず。
好きな子なら、全力でバックアップしてやんなさい!…その代わり」
「その代わり?」
「私たちを、絶対に脱出させること。
……それがウィルの願いであり…おそらく、巻き込まれた皆も同じでしょうね」
「…分かった」
言って、ソーマは圧縮パックの中身を確認する。
トリフルイド:残数1、モノフルイド、ディフルイドは共に残数0。
自身の精神力も疲弊している以上、無茶は出来ないだろう。
取り出し、一気に飲み干す。
「うっしゃぁあああ!!!絶対助けてやる!!!!」
瞳を上げ、一際高くソーマが吼える!!
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