■Sync Side.
『はい、エミーナです……、あれ、シンク?』
コールを待った後に聞こえた声は、いつもの快活な彼女の声で。ちょっと安心する。
安心したついでにいつものじゃれ合い。
「はぁい、元気してたー?どう、充実してる、夜の性活とか?w」
『え、ちょ!?夜の生活て……!?』
んふふ、動揺してる動揺してるw
真面目で初心なとこがまた可愛いんだよね、エミーナって。
「ウフフ、不満があるならいつでもおねーさんに相談してね?初心者にもお勧めな道具もあるわよん?あぁ、良かったらあたしがじっくり丁寧にエミに手取り足取り腰取り……」
『シーンクー……卑猥物陳列罪で逮捕されたい?』
電話先の声がちょっと怒気を帯びる。ありゃりゃ、やりすぎたかしら?
「あははっ、ごめんごめん……ほんのジョークだってば♪」
『キミのそれは冗談に聞こえないってば……もう』
やや大げさにため息を吐き、彼女は電話を掛けて来た理由を問うた。
こうやって電話でのやり取りは実は少なかったりする。実際に会いに行った方が何かと面白いし。
まぁ、今はそれよりもさっきの件だ。
「ねぇ、エミってさ。姉妹とかいるんだっけ?こないだ、偉くそっくりな人がこないだ掛かりに来てね?もう驚いたの何の……」
明るい話題として振ってみたのだが……対してエミーナの反応は暗かった。
『……その。
ボク、孤児だった、から……分からない、んだ』
……触れちゃいけない所だったかな、もしかして。
そう思い、申し訳ない気持ちになる。
「……あ、ごめん。まずい事聞いちゃったわね……」
『いや、いいよ……気にしてないし。それで?』
「あんまりにもそっくりだったから。その、血液検査にかこつけて調べてみたらさ……貴女と、DNAが殆ど一致したの」
『え……?!』
「でも髪の色も瞳の色もエミと違って紅かったのよね。後、雰囲気も全然違ったかなぁ」
『雰囲気……?』
「なんて言うのか、ヤバい仕事を専門で請け負ってきたヒト特有のピリピリ感と言うか……」
そこまで言った所で、彼女が怒鳴る。
普段穏やかな話し方をする彼女が発した、焦ったような声だった。
『シンク!その人のデータ、ボクの端末に送っておいてくれる?!』
「うん、良いけど。何か思い当たる節でもあった?」
『分かんない。でも、なんか……』
言いかけ、はっと気がついたように礼を言い、彼女は電話を切った。
何か、思い出すきっかけを作れたのならいいのだけど、ね。