「はい、エミーナです……、あれ、シンク?」
『はぁい、元気してたー?どう、充実してる、夜の性活とか?w』
「え、ちょ!?夜の生活て……!?」
言ってからあわてて声のトーンを落として周囲を見る。
……よかった、ノラ以外には聞こえた人はいないようだ。そのノラはチェシャ猫みたいなにやにや笑いを浮かべてこっちを見ている。ぜーんぶ分かってて楽しんでるな〜、この子は(涙
『ウフフ、不満があるならいつでもおねーさんに相談してね?初心者にもお勧めな道具もあるわよん?あぁ、良かったらあたしがじっくり丁寧にエミに手取り足取り腰取り……』
「シーンクー……卑猥物陳列罪で逮捕されたい?」
『あははっ、ごめんごめん……ほんのジョークだってば♪』
「キミのそれは冗談に聞こえないってば……もう」
電話の相手はパルムの旧市街で医者という名の何でも屋を営みながら、情報屋でもある友人のニューマン女性、シンク・リオルからだった。以前、ちょっとしたいざこざに巻き込まれそうになっていたのを助けてからの縁なのだが、それ以来何故かボクに過度にスキンシップを取ろうとしてくる、ちょっと困った存在だ。
「で、どうしたの?」
『うん……』
そのシンクがちょっと声のトーンを落として、言いにくそうにこう切り出してきた。
『ねぇ、エミってさ。姉妹とかいるんだっけ?
こないだ、偉くそっくりな人がこないだ掛かりに来てね?もう驚いたの何の……』
「……その。
ボク、孤児だった、から……分からない、んだ」
『……あ、ごめん。まずい事聞いちゃったわね……』
「いや、いいよ……気にしてないし。それで?」
『あんまりにもそっくりだったから。その、血液検査にかこつけて調べてみたらさ……エミと、DNAが殆ど一致したのよ』
「え……?!」
言われた途端、頭の中が真っ白になる。
シンクは、今なんと言った?
(いつボクのDNA情報を……?)
いや、気になるけど今の論点はそこじゃない。
(ボクと、DNAが殆ど一致した……って?)
もしそうだとすれば……そのヒトは……。
『でも髪の色も瞳の色もエミと違って紅かったのよね。後、雰囲気も全然違ったかなぁ』
「雰囲気……?」
『なんて言うのか、ヤバい仕事を専門で請け負ってきたヒト特有のピリピリ感と言うか……』
何だろう。胸の中でモヤモヤとしたものが生まれる。
ボクは反射的にシンクへ怒鳴っていた。
「シンク!その人のデータ、ボクの端末に送っておいてくれる?!」
『うん、良いけど。何か思い当たる節でもあった?』
「分かんない。でも、なんか……」
理由は分からないけれど、"逃すな!"と心が強く告げていたのだ。
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