Cross Point
5th Night...[ホントウノキモチ]



 




ルシーダがこちらへ向かって突進する。
……速い!!
足を狙って横薙ぎに払われた大型の武器を、ボクは咄嗟にクレアダブルスの下端のブレードで受けた。

(くっ……!)

速くて、重い一撃。
受け止める事が瞬時に無理であることを悟り、受けから受け流し、そのまま攻めへ転じる。
一つ一つのダメージが少なくとも、連続する追撃で相手に攻撃の隙を与えない。
ダブルセイバーの基本を護りつつ、突攻撃を繰り出すと、分かっていたかのように身体を逸らし、顎を振り上げ、ギリギリで避けるルシーダ。
不安定な体勢のまま、引き途中のボクのダブルスの刃を強引に手持ちの槍で弾き、その反動を利用して間合いを取る。
凄いな。相手の力と自分の力を瞬時に、それも正確に把握できてなきゃこんな芸当は出来ない。
そして訪れる、一瞬の静寂。
彼女は左下に刃先を向けて構え、ボクはダブルスを持つ右手を軽く引いて連撃に繋げられるような体勢。

「ほら、攻めておいでよ。僕を倒してみなよ……!」
「……ッ!」

遊ばれているのは分かっている。でも、ここで諦めたら、ボクの、そして恐らく、ルシーダの命はない。それは殆ど直感だった。
だから、今度はボクから突進する。刃と刃がぶつかり合い、フォトン同士が触れあう羽虫のような音が辺りに響く。
火花が散り、離れ、またぶつかり合う。

「く……ぅっ!」

実力差は、恐らく五分五分だろう。でも、刃に乗っている速度とパワーはボクと段違いだった。
彼女の方が、何倍も重く、速い。このまま受け続けていれば、ボクの方が先にへばってしまう。

「どうしたの?もう、終わり?」

早くも息が上がり始めたボクに、挑発するかのように言うルシーダ。
まだ遊び足りないだろう?まだ戦い足りないだろう?
冷酷に見下ろされるその瞳は、暇つぶしに獲物を追い詰める猟師のような、歪んだ快楽を楽しんでいるかのようだった。

「ボクは――ボクはまだ、キミを助けるのを諦めない!!」

ぴくり、とルシーダが反応する。
一瞬、何かを思い出したような表情は、やがて憤怒の表情となる。

「まだ言ってるの?偽善なんて、イラナイよ!!」

力任せに放たれた一撃が、クレアダブルスを下へと弾き飛ばす。

(しまった!!――ナックルは、間に合わない?!)
「さよなら。オリジナル」

そして彼女は、振りかぶった刀を返してボクの頭上へ、無慈悲に振り下ろす――。