「…ずっと、気を使わせてたんだな。
すまん…もっと早く、気付いてやれればよかった」
包むようにボクを抱きながら、ウィルは普段より穏やかな、優しい声で言った。
"あの時"を―初めて心を開いた時に、抱きしめてくれた事を強く思い出して、ボクは視線を上げた。
「そんな、ウィルは…」
「…他にも道はあったのかもしれないな、ほんとは。
だけど…」
左右に首を振り、苦笑いするウィル。
「俺も、不器用だったんだよ。
突然現れた妹に、どう接していいかわからなかった。
そうやって、戸惑ったまま年月が過ぎる内に…」
ボクの頭をくしゃっと撫でて、眩しいものを見るかのように、ボクの顔を見る。
「お前はいつの間にか、こんなに大人になってたんだ」
「うん…」
言い返す言葉が見つからず、曖昧にうなずく。
「エミ…さっき言った言葉に、後悔はないか?」
「ぇ…?」
「俺も…お前のこと、抱きたい。
途中でダメと言われても、止められない、からな?」
「…ぁ」
言われた言葉が、ゆっくり頭の中に浸透して−。
嬉しいような、悲しいような、複雑な気分になる。
彼は、ボクを受け入れてくれる覚悟を決めてくれていた。
…でも、ボクは?
一時の勢いで、言ってしまったんじゃないのか?
ボクは、本当に彼のこと、愛せる資格があるのか?
あんな酷いこと、言ったのに。
兄妹じゃなく、別の関係として、みんなに内緒で。
こんな、こと…。
「…」
今夜、だけなら、と。
優しい悪魔が、心の中で囁いた。
みんなとの関係が、もう二度と戻せないのなら…最後位、思いっきり甘えてもいいよね、と。
…今夜っきりにしよう、こんな関係は。
みんなには、迷惑をかけたくはない。
でも−疼く躰を収めることもできなかった、ボクは。
「今夜…今夜、だけ…ボクを、満たして」
ココロに忍び寄る寒さと、痛みと。
それを上回る躰の熱が増す毎に、思考は溶けて。
うわごとのように小さく呟いて、ボクの腕は、ウィルの身体に絡みついた…。
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