なにか、出来ることを。
朦朧としだした頭をフル回転させて、思いついたことはコレくらいで。
「く…ぬ…っ」
もう、少し。
(届いた!)
「これ、受け取って…!」
もう少しだけ動いて、ボクの身体。
"二人とも助からない"よりは"一人でも助かる"方がいい。
ルシーダが助かるなら。
間違いなく、ボクよりずっと苦しんでいたんだもの。キミは、幸せな未来を見るべきだと思うから。
残った力を振り絞って、渾身の力でクレアダブルスを放り投げる。
それは狙ったかのように彼女の右手の中へ収まり。
「…ありがとう。使わせて、もらうね」
「ご、め…頼む、ね」
「…エミも、頑張って。もう少しだから」
「…ん」
そう言って、ちろり、と柄の部分を嘗めとって。
今まで以上に自然に、滑らかに、そして猛禽のように猛然と舞う彼女を見て。
「綺麗だ…なぁ」
霞み始めた視界の中、ボクは思わず場違いな感想を漏らした。
何も見えなくなる前に、ボクという存在が消えてしまう前に。
せめて…ボクらが"一人じゃなかった事"を覚えておきたかった。
でもそれも、…限界、かな。
身体の感覚も、視界も、聴覚も…痛みすら消えて。
(ウィル、ノラ…そしてルシーダ……ごめん。ボク…)
意識が闇に閉ざされる直前で、ルシーダがボクを呼ぶ声を聞いたような気がした。
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