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「メイド〜?」

リオネスの突飛な願いにガレスは眉を僅かに跳ね上げた。

「だって、移民の話が決まっても全然荷物が片付かないし。
 お互い、ハンターズ以外に仕事を抱え込んでいるし〜。
 だから、あたし達の家にもお手伝いさんが必要だと思うのよね」

ふぅ、と一つ溜息を付いてリオネスはコップのミネラル・ウォーターを喉に流し込んだ。

「それは…俺も否定できんな・・・」

自分の周囲を見回して、ガレスも溜息をついた。
幸い、ゴミの処理は定期的に行っている為、異臭を放つような事は無いが、足の踏み場は、最早、獣道化している。
特に、惑星ラグオルへの移民が決まり、荷物を纏め出してみると、捨てるにしろ捨てないにしろ、部屋の中の荷物はその量を増加させた。
在宅勤務とはいえ、フリーのSEをこなしているガレス、ハンターズ・ギルド直営の病院で看護婦の仕事をしているリオネスとでは、自宅の家事が精一杯で引越しの為の荷物整理まで手が回らないのが実状だ。

「仕方ない、やりくりしてみるか…知り合いであてに出来る、腕のいいチューナーと言えば…あいつか…」 


「ふむむ、それでなるべく安くお手伝いアンドロイドさんが欲しい、と」
「あぁ。頼めるかな?」

彼の自宅からエア・バイクで10分ほど。
隣の工業区との間に位置する小さな工場に住んでいる義妹の所にガレスは足を運んでいた。

「それで…予算はどのくらいを考えてるの?」
「あまり多くは用意できない。こちらも何かと入り用でね…こんなものか」

ガレスは交渉相手に指を4本―40万メセタ―立てた。

「む〜〜、難しいなぁ…それだったら御自慢の実家に頼ってみたほうがいいんじゃ?」
「…そんなことしてみろ、後で倍額以上の仕事を押付けられるわ!」

彼の目の前にいる、オフィス用椅子に座って眉にしわを寄せ、考え込んでいるのは長身のニューマンの少女。
銀髪のショートの髪に浅黒い肌、呪術的な化粧をしたその顔はどこかオリエンタルな雰囲気を漂わせる美少女だ。
しかし、着ているのが油のシミがこびりついた白い繋ぎでは、その魅力も半減してしまうだろう。

「うぅむ、やっぱり最近の製品だと難しいかも…ねぇ…」
「OK、カスタムで何とか出来るならそれで頼むよ、シンク」
「はい、決まったからには最良のお仕事をさせてもらいます♪」

シンク、と呼ばれたその銀髪の少女はにっこり微笑んだ。



 


 
 
 
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