キャンプシップをアークスシップ4番艦アンスールに着艦させる。
着艦シークエンスは全自動で滞りなく行われた。
テレポーターを通してロビーエリアに戻る。
異星に降りたことによる、煩わしいウイルスチェックや洗浄なんて必要ない。
テレポーターを通るときに不要なそれらは転移されないからだ。
『ゼンチ、ここではWISだぞ』
『わかっているさ』
ロビーを歩きながら、再三に渡る注意。
ゼンチのことは秘密にしている。
チーム員でもごく一部にしか伝わっていない。
マグが喋るなんてありえないことだが、それ以上にこいつがルーサーである、というのが問題だった。
どこで恨みを買っているか分かったものじゃない。
少なくとも、六芒均衡に伝えるなんてもってのほかだ。
彼らは、現在のアークスTOP集団でありながら、全員がルーサーに対し個人的な恨みを抱いている。
特に"始末屋"クーナに知られた日にはゼンチどころか僕まで殺されるかもしれない。
彼女は研究者のアキを許したが、ルーサーは許さないだろう。
僕には彼らと友誼を深めた記憶があるが、彼らは僕のことを知らないのである。
だから、僕は出来るだけ六芒均衡とは関わりたくはなかった。
「おーい、ごろーちゃん!」
呼び止められる。オタさんだ。
見れば(仮)の皆がロビーエリアの階段にたむろしている。
普段の(仮)はここを拠点にしているのだ。
階段を拠点にするなんて不良っぽいが、僕らは不良ではない、と思う。
どちらかというと変態の集まりだ。
なお、少し横に立って勤務中のアークスロード管理官アスタルテ女史は、すでに僕らのことを見て見ぬ振りをしている。
「やあ、オタさん。どうしたの?」
『ちょっと聞いてくれよ。なんかまずいことになりそうだぜ?』
オタさんからのWIS。彼の目線はゼンチの方を向いている。
オタさんはゼンチのことを知っている一人だ。
『ゼンチについて何か?』
『いや、そうじゃないけど、そうなんだ!』
どういうことか、と思ったが疑問はすぐに氷解する。
メルさんとベルさんが、たまり場に走ってやってきた。
「リブートについていい案を思いついたぜ!!」
「これ聞いたら皆ビックリするよ!」
集会を待たずに物事が進んでいくこともままあるのが(仮)の特徴だ。
だから、それはいい。
猛烈に嫌な予感がする。
ハイテンションな二人が同時に言った。
「「名付けて、クーナライブをプロデュースしよう大作戦!!」」
>> to be continued
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