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ファイル3:変革/Trans
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チャコ、メルヴィン、ベルファミアの三人は、使われていないスフィアアリーナに来ていた。 「ホントにここ? なんかのリハでもしてるのかな?」 ベルファミアが首を傾げながらアリーナを見上げた。 「もしかしたら、ここでライブの収録してるのかもしれねえ!!」 「! そっか、収録どこでやってるか秘密だったもんね!」 盛り上がるメルヴィンとベルファミアをよそに、チャコはモノリスに埋め込まれた記憶を辿る。 「……ハドレッド」 チャコの口から漏れ出たのはクーナの弟分の名前。ここは、かつてクーナがハドレッドと対立し、詰問をした場所なのだ。 チャコたちはゆっくりとスフィアアリーナに入って行った。 ―――ありがとう 聞こえていますか わたしの歌が わたしの欠片が 目蓋伏せればすぐに会えるのに いつだって誰よりも近くにいれたのにね――― 「……これって、永遠のencore?」 「……すげえ、生声だ」 感嘆の声を漏らす二人をよそに、チャコの眉は顰められていた。 いかに通信技術が発達しようと、魂までは伝わらない。故に生声には価値がある。 こういう時、仄かな自己嫌悪をチャコは覚える。
やがて、クーナは目を開けチャコら3人を見た。 「もしかして(仮)の方? ウルクちゃんから聞いてます!」 「そ、そうです!! ボク、メルヴィンっていいます! サ、サインいいですか!?」 「こらっ、抜け駆けすんじゃ……って違う! あたしたち(仮)のメンバーで、クーナちゃんの協力を取り付けたくてっ!」 懐からサイン色紙を取り出したメルヴィンにヘッドロックを掛けつつ、意気込んで頼み込むベルファミア。 「うんっ! いいよ!」 にこやかに笑いながら、アイドルはそう口を動かした。 (あっ、こいつ人形だ) チャコはそう気づく。 (どこにこいつは自分を忘れてきたんだろう?) 絶対令の日はクーナはまともだった。 『みんな……いい加減目を覚ませ! 都合の良い現実ばっか見てるんじゃないっ! その目で見て、その頭で考えろ!』 正直、スカッとした。 チャコは、商談を進めるベルファミアたちを見ながら、クーナの観察を続けた。
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