ファイル3:変革/Trans
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「それはできたけど、今のクーナちゃんのままじゃ駄目だわ。アークスをリブートさせることなんてできないよ」 サクサクとタルトをつまみにしながら経緯を説明するチャコさん。なお、グラスの方はもう3杯目だ。 「でもクーナがそうなった原因ってなんだ? クーナは目的果たして万々歳じゃないか」 「それが、最初に言った燃え尽き症候群よ。可愛い弟:ハドレッドきゅんとの別れは済ませた。とっても哀しいけどこの落とし前はルーサーにつけさせないといけない。 僕の左肩でゼンチが震えた。クーナに殺されるところでも想像したのだろう。 「燃え尽きたなら、薪を変えて火をくべないといけませんね!!」 「目的を変えるってことか。いいかもしれないね」 枯葉さんの案に賛同する。 「……んー、でもあたいこさんの話でいうならクーナちゃんは薪を後生大事に抱え込むタイプだよ。薪を捨てさせたり、新しい薪をくべることが出来るのはクーナちゃん自身かハドレッドきゅんくらいしかいない」 「俺たち、クーナにとっては赤の他人だしなぁ……」 オタさんの言葉で沈黙が訪れる。クーナの心を変えさせるのはとても難しそうだ。 「おい、ゼンチ! なにかアイデアないか?」 「フン、人の心を操りたいなら外堀から埋めるんだね。クーナの心の頼りがハドレッドなら、ハドレッドに薪を変えさせればいい」 「相手は死んでるんだぞ?」 「死人に口なし。いくらでも遺言をでっちあげれるじゃないか?」 途端に、全員の冷たい視線がゼンチに降りかかる。顔を背けるようにゼンチはくるっと回った。
「……エミナさんの意見も聞きたいね」 「あー。そうだね。あの子もお姉ちゃんだしね。いい意見が出るかも」 「それ、初耳ですよ!?」 チャコさんが言った途端、枯葉さんが食いついた。僕も初耳だ。 「弟さんですか? もしかしてもしかすると妹ちゃんですか!?」 「あたいこさんは相変わらずじゃのう……」 「妹ー。実妹じゃなくて義理の妹らしいよ。名前はサフラン。褐色銀髪のかわいい子なの。つくねが小悪魔系だとするとサフランは子犬系」 「わんちゃん!? ぜひお会いしたい!! 早速、えみなさんに連絡とりましょう!」 枯葉さんの黄色い声が響き渡る。 「なあ、リバー。彼女は何故あんなに興奮しているんだ?」 「ゼンチ……世の中には知らない方がいいこともあるんだ……」 僕とゼンチが喋っている間に、チャコさんがエミナさんに通話を開始していた。 「鯖味噌、聞こえるー? あのさ、あたいこさんちに……」 『チャッ……チャコ姐っ! 助けて! サフランがっ!』 カットインに映ったエミナさんの顔は、焦燥に満ち溢れていた。
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