「"店長"、何故、貴方がここに……?」
困惑の表情のまま、ルシーダが店長さんに問う。
店長さんは、苦笑とも怒りともつかない表情でルシーダに言い放つ。
「前にも言ったろうが。
俺ぁ、テメェの事が見てられんのよ。線が細いくせしやがって、無理ばっかりしやがって。――もう一度 はっきり言うぜ、お前はこの稼業に向いてねぇよ。とっととやめちまえ!!」
「……ッ」
店長さんにはっきり断言され、びくり、とルシーダが震えた。
さっきまでの狂悦の色がなりを潜め、彼女はどこか捨てられた子犬のような雰囲気を纏う。
「……笑わせるな"火消し屋"。
向く向かぬは関係ない。貴様も、こいつも、イルミナスを構成するその部品だろうが」
横やりから放たれる490のセリフに、苦虫を噛み潰したかのような表情で店長さんはペッと唾を吐き捨てた。
「あァ?お前らみたいな効率厨に、人間様の何が分かるッてんだ?
どんなものであろうと有用と分かれば掻っ攫い、不要となるや即切り捨てる――そんな奴らが、ヒューマン至上主義だってんだから、とんだお笑い種だよな?」
「それのどこが悪い?組織もまたシステムの一つ。効率よく動いてこそ我々の版図も……」
「その為に、俺達ゃどんだけ無駄な血を流してきたっけかなァ?
こんだけ言って矛盾に気づかないようじゃ……アンタも俺も、ここいらが年貢の納め時かもなぁ、えぇ?マガシの旦那よぉ?!」
いきなり後ろを向き、何も無いと思われたところに発砲する店長さん。
そこへ、じわり、と光がゆがみ、人影が露わになる。
――レンヴォルト・マガシ。ボクにとっての、赤い、恐怖そのもの。
「はん、殺気バリバリじゃ姿隠しててもモロバレだぜ、旦那?」
「ぬかせ!裏切り者めが!!」
「ハッハァッ!旦那の本気はそんなもんかよ!!そんなんで俺らを殺れるとでも?!」
「黙れぇぃ!!」
既に彼らの戦いは、他人がヘタに介入すると邪魔なだけの領域まで加速していた。
490は大きく後ろに後退している。ルシーダを伴って逃げるなら今しかない。
そう思った瞬間――。
「ガハッ……!!」
「!!っ」
店長さんの腹に、マガシの剣が深々と突き刺さった。
ニヤリとイヤらしく笑う、紅いキャストのその表情がそのまま固まり――動かなくなる。
見ると、マガシの右胸に小さなヒートナイフが突き立っていた。
ジェネレータの少し上、電力を全身に行き渡らせるメインケーブルが埋まっている所――。
キャストの唯一の弱点とも言うべきその一点に、彼は僅かな瞬間で突き立てて見せたのだ。
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