「ふん。デリータ相手に戯れ言かぁ、エミーナ・ハーヅウェル? 詰まらん。実に詰まらんなぁ。
……お遊びはここまで、そろそろ終わらせるか ――さぁ、ティル・ベルクラント。この用済みをとっとと"消去"しろ」
「うぁっ?!」
真後ろから490に足払いを食らい、ボクは床へと叩きつけられた。
さっきまで目の前にいたはずなのに、いつの間に……?!
俯き、震えるばかりのルシーダに、490は底冷えのする声で宣言する。
「ふん、貴様も"故障"したか……?
ならば……まとめて処理するまでだ。なぁ、"出来損ない"?分かっていたことだよなぁ?」
「駄目だ、ルシーダ、逃げてぇっ!!」
ツーヘッドラグナスの燃える無慈悲な刃が、ルシーダ目掛けて振り下ろされる。
……呆然と、反撃しようとする素振りすら見せないルシーダ。
想像に容易い未来を否定する為に、ボクは叫びながら無我夢中で彼女を庇う為に自分の身体を晒す。
「この子は……もう、誰にも傷つけさせない……!!」
「……邪魔だぁっ!」
490の無造作に振られた片手剣が……スローモーションのようにボクの右肩に食い込み、振り抜かれ。
その勢いのまま片手剣の切っ先がボクの肩に触れ、振り抜かれた。
とっさに避けたつもりだったけど……全然、間に合わなくて。地面が迫ってきて……次の瞬間にはボクは地面に投げ出されていて。
「……っ?!」
慌てて立ち上がろうとして、くらり、と視界が揺れ、足がもつれたかの様に転ぶ。
転んだ拍子に、水音が聞こえ、痺れたように右肩から先の腕の感覚がなくなっている事に気がついた。
「あ…がっ……!?」
痛みは、ある…腕が斬り飛ばされるなんて事にはなってなかったようだ。
でも。
どくん、と服に広がる生暖かい感触に、ボクは反射的に左手で右肩に触れる。
ぬるり、と滑った手の平には……。
「……血?」
べったりと、赤い液体が手に付着する。傷を押さえつけても、心臓の動きとともにじわじわと溢れ出て、上着を、右腕を濡らしていくのが分かった。
それと同時に、事実を認識した身体が瞬間的にショック状態に陥って硬直するのが分かった。
「あ……ああぁ……?!」
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