『始めっ!』
開始合図とともに、ルシーダとボクの刃がぶつかり合う。
得物は、彼女もボクもダブルセイバー。
得意とする戦種が同じというのは、端から見ると戦いやすそうに見えて、実の所思いの外戦いにくい。
それは攻めるポイント、受けるポイントが同じだという事。リーチがほぼ同じならば――最終的に純粋な技量や力がある者が勝つという事だ。
(ルシーダとのリーチはほぼ互角、でも、技量や力は――)
一撃一撃に力とスピードが乗って、ずっしりと重い。ニューマンにあるまじき瞬発力と爆発力が半端ない。
身体強化の影響はほぼ無くなった、と本人から聞いたが、力の乗せ方や身体の使い方にはルシーダがまだ一枚も二枚も上手なようだ。
「くぅっ!」
数回受けるだけで、腕が痺れてくる。
まともに受け続ければ、倒されるのはこっちだ。
(やっぱり、手数で裁くしかない、か!)
あの時と同じく、ダブルセイバー特有の連撃で相手の力を逃がし、流れのままにそれを次の攻撃へと繋げる。セオリー通りと言えばその通り。でも、これ以上の攻撃方法を思いつかなかったのも確かだ。
一瞬の隙を突く。ボクがルシーダに勝つには、それしかない。
――だが。
「……ふふっ、そう来ると思ってたよ!」
「!?ッ」
その動きが、封じられる。
(読まれてた?!)
絶対的な力でボクのブレードを止めた反動をそのまま乗せたルシーダのダブルセイバーの切っ先が、ボクの喉元へと滑る。
とっさに身体、顎を反らして回避、追撃をそのままバク転でかわし、距離を取る。
「……やるね、エミーナ。避けられるなんて思わなかったよ」
「結構、ギリッギリだけどね!」
余裕たっぷりなルシーダ。対してボクは息も上がり、余裕なんてなかった。
(うぅ……やっぱり強いな、ルシーダ)
そりゃ確かに前衛職として鍛えてはいるけど、普通のニューマン女性が前衛なんて本来向かないのは周知の通りだ。
でも――この戦いだけは、負けられない。絶対に。
「まだ、続けるよね?次は、取るよ」
「……望む、所だ」
数瞬のインターバルの後、ボクらの"対話"はなおも続いた。
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