攻め込み、攻め込まれ。
防御し、防御され――。
そして、一進一退の膠着状態のまま、開始から随分時間が経った。
(……一体、何分経っただろう?)
息が上がる。全身の関節が熱を持ち、筋肉が震える。全身を汗が滝のように流れ落ちていく。
しかし汗が目に入るのも無視して、ボクは彼女を睨むように正面視界に入れる。
30分以上全力戦闘するなんて、ガーディアンズに入隊する前も、した後も経験などした事はない。
もちろん、長時間の任務に就いた事もあるけれど、それは戦闘と休憩が交互にやってくるものであって――。
「一緒に居る気は無いの?! 一緒の方が、前みたいな事には――」
「くどいよ!僕は――もう君を巻き込みたくないッ!」
「こっ……この、分からず屋ああぁぁあ!!!!」
「分からず屋は、どっちだよぉ!!!!」
こんな、叫びながらやるものでもないはずで。
ボクらは、ここがVR訓練施設である事も、知り合いが観戦している事すらも忘れて、子供の喧嘩の様に想いをぶつけ合い、お互いボロボロになりながら攻撃を交わし合っていた。
身体はクタクタ、スタミナも限界、声も枯れてガラガラだ。なのに、嬉しい。
全力を出しきって、本音をぶつけ合って、身も心も軽くなっていく。そんな気分だった。
「僕は、君の事なんか……ッ!」
ルシーダが上段から振りかぶる。全てを否定をするかのように。
だからボクは――。
「ボクは、キミの事を……ッ!」
守るだなんて、無理は言わない。巻き込まれるのは、元々承知の上。
ただ、キミと一緒にいたいから。一緒に生きたいから。
そしてもうこれ以上、ルシーダに失ってほしくないから。
だから――!
(だからこの勝負、凌ぎきって……勝つ!!)
ダブルセイバーが振り下ろされる。
ボクは自分の得物から手を離し、ショートカットからある兵装をスイッチ。無手の両手を広げ、空へと掲げる。
「!?っ」
予想外の動きに、ルシーダが初めて動揺の気配を見せる。
ボクの両の手の平を覆うように、訓連用ナックルがナノトランサーから展開し、包み込んでいく。
そう、元々ボクはもう一つの得意な戦種、ナックルに賭けていた。ゼロ距離での乱戦を想定して……とはいっても、ルシーダが乗ってくれるかどうかの出たとこ勝負だったけれど。
(……ッ!)
右手に手応え。ガッチリと掴み、ロック機構で指を固定する。
「くぅっ!?」
意図に気づいたルシーダが猛然と身を捩るが、もう遅い。両手で振り下ろし切ったその体勢では、咄嗟には動けない!
そしてボクは、左手をルシーダの空いた右腹へと、最後の力を振り絞って打ち込んだ。
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