後日。
エミーナの後身人として改修され、正式に"ヒューキャシール"として生まれ変わった彼女を、ウィルとシンクは見上げていた。
基本システムはハーヅウェル家のお手伝い兼レイキャシ―ルであるイー・フリーナのものを基本に、データ提供を申し出てきたシンデンのデータをアップデートさせる事で対処している。
本来生まれ(製造メーカ)が異なる二人だが、その二人に接した事のあるシンクがOSに大幅に手を加え、何とか纏め上げたのだ。
「…起動します」
「おっけ、頼むね」
すぅ、と顔を上げ、金色の瞳を開く彼女。
「起動完了。…おはようございます」
じっと見つめられ、恥ずかしそうに彼女は言った。
「ほぇぇ、流石イフィさんのシステム…感情まで完璧ですね」
「あいつも稼動年数長いからな…」
「そだ、名前どうするんです?」
「そだね・・・セラフィムなんて、どうだろう?」
「セラフィム・・・天使の位の名ですね…了解しました・…登録完了。
よろしくお願いします、マスター」
微笑み、ぺこりとお辞儀するセラフィム。
「あ、マスターはやめてくれ。俺はお前さんのご主人なんかじゃない」
「え…?」
「お前さんはうちの家族になるんだ」
「か…ぞ…く…?」
びっくりしたようにセラフィム。
「そう。
アンドロイドだってヒューマンだってニューマンだってうちは関係ない。
一緒に暮らしている以上、家族だからな」
「あ…はい!
それでは…どのように呼べば…?」
「俺はウィル・ハーヅウェルだ。ウィルでいいよ」
「はい・・・ウィルさん」
心なしか瞳を潤ませ、セラフィムは満面の笑顔を浮かべたのだった。
☆
「そ、そんな経緯で作られたんですか、私…」
「ん、まぁ…そういう事みたいだね…シンクの話だと」
ウィルの苦笑いに、普段はクールなその金色の瞳に涙を浮かべ、すすり泣くセラフィム。
外見は20歳くらいだが、こうしてみると少女のよう。
まだ生まれたばかりである事も起因しているのか、幼い妹がもう一人出来たかのようだ。
「はぅぅっ…姉上〜〜(涙」
「よしよし…(苦笑)」
「やれやれw」
―その頃のオークニー夫妻宅―
「…で、ガレス。メイドさんは無理なのはわかったけど…どうすんのよ、この荷物!」
「…しかたない、駆け出しハンターズでも雇うか…」
「そんな予算があるか〜い!!」
どげしっ!
「ぐはっ」
「そっ、それじゃあたしはこの辺で〜・・・」
リオネスの掌底をまともに顎にくらい、スローモーションのように荷物の山に頭からダイブするガレス。
ピクリとも動かないあたり、やばそうな気がするのは気のせいか(苦笑)
その姿を見てこっそり逃げ出そうとするシンクだったが、そんな妹を見逃すほどリオネスは甘くもなく。
「…リネット(シンクの本名)!、あんたも手伝いなさ〜い!!」
「どひぃ〜!(涙)」
結局、なーんにも片付いてなかったりするのである…。
(了)
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