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ファイル2:複製/コピー





僕らは、宙間飛行中のチームルームでボスを中心にしてミーティングをしていた。
ボスがセンターに立って話し、皆は備え付けのソファーに座って聞いている。

「「「プロジェクト・リブート?」」」

「おう。上層部からのオーダーだなー。こないだの事件でおまいらも上層部、というか本部自体信用しなくなったろ? でもこのままじゃ士気の低下がヤバイっていうんで」

「士気向上のため、今までの機密をオープンにしてクリーンな組織に変え、且つアークスを再定義する、そういうことね」

ヨシオさんの言葉を継いだのはマリさんだ。ホロヴィジョンで手元の資料を確認している。
僕も資料を開いて確認する。しばらく読み進めると、これより機密情報故注意されたし、の文言があった。

しかし、僕は機密の内容を読む前から知っていた。
僕だけじゃない。チャコさんもオタさんもつくねも、モノリスにアクセスしたこの場の半数が知っている。


おそらく、ルーサーのことだろう。
虚空機関の長であり、最後のフォトナー。
かいつまんで要約してしまえば、不死のマッドサイエンティストで、アークスを私的に運用していた影の支配者である。
あろうことかアークスの天敵であるダークファルスと癒着して、自らの野望である『全知を識ること』を狙っていた。

これまでのアークスは、数十年に渡りアイツの傀儡だったのだ。
マッチポンプのようにダーカーと戦わされてきたのだから、それを知ってしまえば今まではなんだったのか?となる。

もちろん、そんな行為をさせていたのはルーサーだけで、本部はそこまで腐ってはいなかった。
一介の管制官なんてまるで事情を知らないだろう。
ただルーサーにとって有益な方向に圧力がかかることが稀にあっただけ。
しかし、だとしてもそれをアークスの皆が信じてくれるかはわからない。


『なぁ、これ事実書いてあんのかな?』

パーティチャットを通してオタさんからの質問。
そういえば浮上施設を脱出してからパーティを解散していなかった。好都合だ。

『事実を書いてなかったら、それまでっていうことだよ』

エミナさんがバッサリ切る。そう、機密を開示すると言いながら事実でないなら信用に値するわけがない。

『でも、これウルクちゃんが書いてるんじゃないですか? だったら信用できますよ!』

隣を見ると、枯葉さんが自信ありげな顔で頷いている。"だってウルクちゃん良い子ですもん!"って顔だ。

『読めばわかるさ』『せやな』『うん、そうだね』


はたして機密事項にはしっかりとルーサーのことが書いてあった。
そればかりかこのファイルの記名者はウルクらしく、署名まである。
僕らモノリス接触組にとってウルクは別の世界線における仲間なのだから、このプロジェクトを疑うも何もない。

チームの半数がモノリスに接触していたので、かなりスムーズに「この計画を皆で成功させようぜ!」のノリとなった。
なお、ぴさんは途中まで反対していたが、ウルクのバストサイズがボスからリークされたことをキッカケに宗旨変えしている。

議論が再燃したのはつくねが発した次の質問からだった。

「で。どうすればよいのじゃ、これ?」

「アークスが何なのか再定義する、ねえ……」「今までの任務をまとめる?」「アークスたちにインタビューしよう!」

次々に出される意見。
中にはこんなものもあった。

「どうせならルーサーの野郎にも話聞きたいぜ。最初から俺たちを利用するだけだったのか? それとも途中で欲だしちまったのか?ってな」

ちなみに言ったのはメルさんである。
とりあえず、次にダークファルス・ルーサーに会ったときにそれは聞くことにし、その場は解散することになった。

何せ、皆疲れ果てていたからだ。
エミナさんを初めとしてうつらうつらしているメンバーが何人もいた。

「寝落ちしそうな奴もいるし、今回はこれで解散としようか。次の集会までにはいろいろと決めるからなー」

ボスの言葉に頷いて、僕らはテレポーターを通してそれぞれの家:マイルームに戻っていく。

おっと、そうだ。忘れるところだった。帰りがけのみづきさんに声をかける。

「みづきさーん!」

「ん? ごろーちゃん、どうしたの?」

「さっきの探索で僕のマグが機能不全なんだ。みづきさんそういうのも治せる?」

仮随一のクラフターとはいえ流石にマグは無理だろう、と思いながらも駄目元で聞いてみる。

「ん、できるよ」

流石のクラフターだった。

「ただ、いいんちょうから先に一つ作業受けてるから、それやりながらでもいいかな?」

「もちろん構わないさ」

横を見るといいんちょうがやってきていた。

「早くしないとクーナの時間が来ちゃうから! 早くするんだ! どうなってもしらんぞー!!」

ああ、駄目な時のいいんちょうだ。
ちなみに「クーナの時間」というのはいいんちょうが楽しみにしているWEB番組らしい。
日が変わる頃に放映され、その度にいいんちょうは絶叫している。あまりの正確さから時報と呼ばれるようになった。

時間を確認すると23:30。どうやら、みづきさんの家で時報を生で聞く羽目になりそうだ。

 

 

 

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