ファイル3:変革/Trans
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今日の集会は赤部屋で行われた。 皆は赤部屋の床に座ったり、塀のヘリに腰かけたりしている。 「……ボスは、どこだ?」 メルさんがきょろきょろと一同の顔を見渡す。 「よちおがいつも集会にでると思ったら大間違いだ」 湊さんの容赦ないツッコミ。 「他にウルクちゃんに連絡付けれる人はいないのか!?」 「あいつ、そういうの引き継ぎしなかったよ」 りあこさんが言った。 がくり、と挫折したメルさんを置いておいて各自が報告を行う。 それらの報告がブレインストーミングされると、リブートの外郭が薄らと見えてくる。 「いくぞー! まじかるまいろん☆ぱわー!!」 ろんちゃんが普段コマーシャルを映しているモニターに近づいた。 民間人から見たアークス/惑星探査/アークスの起源/ダーカー駆逐/ルーサーに聞く/クラフト/レアドロップ掘り/民間人の救出 アークスの業務内容や、アークスを取り巻く環境、リブートを成功させるためにどうすべきか、といったことが羅列される。
『なんだろう? アークス発足時のメイキングコンセプトかい? それとも、僕が歪めたアークス像かい?』 察するのが早い。言葉のトーンにはからかうようなニュアンスが含まれていた。そのことに不快感を抱きながらも僕は質問を続ける。 『……まずは前の方から』 『元々アークスは「ダーカーを駆除する戦闘集団」だった。それ以上でも以下でもない。ダーカーの駆除が至上命題で異星生物との交流なんて二の次さ』 『それだけなのか? 他に目的とかは?』 『無い。アークスの存在理由はダーカーの駆除だ。二の次にされている全ての事項はオマケに過ぎない』 だからといってダーカーの駆除をする者=アークスというのは今のアークスに全面的に受け入れられるのだろうか? 『アークスはダーカーに対抗するための軍隊である、なんて言ってもなぁ……』 『リバー、軍という古語に与えられた意味は今のアークスとは異なる。軍隊とは受動的な存在だ。なにかが起こった時に戦闘すべく存在し、在るだけで他者の反抗を抑圧する者共が軍隊だ。でもアークスは違うだろう?』 その通りだった。 そう語ると、ゼンチは鷹揚に頷いた。身体が無いのでマグがゆっくりと上下移動しただけなのだが。 『良い兆候だ。君は、今まで疑問にも思わなかったことに気付けるようになった。な? 知るということは凄いだろ? 全知というのはこの先にあるんだ』 『……情報の大切さは知っているつもりだ。じゃあ、後者について言ってくれ。お前はアークスをどうしたかった?』 『アークスをどうこうしたい、という欲求なんて無かったな。僕は全知を手に入れたい。利用できるものはなんでも利用するつもりだった。そして、アークスは絶好の玩具であり道具だった』 『だから【若人】と癒着していてもアークスの活動自体は止めなかったのか』 ルーサーがその気になればアークスはとっくの昔に壊滅していてもおかしくはなかった。 『ゼンチ。お前って結構優秀だったのか?』 『なんだいきなり!? 悪いモノでも食べたのか?』 『お前は一人で宿敵のダークファルスと接触して取引をした挙句、向こうに寝返ったんだろ? それって異星体との交流という視点で見れば快挙だと思うぞ』 よく考えたら【巨躯】をナベリウスに封印してから十年は平和だった。それはこいつのおかげだったのかもしれない、とふと思ったのだ。 『……君、やっぱり変人だな』 せっかく褒めたというのに呆れられてしまったようだ。微妙な空気が横たわる。 トントン、と肩を叩かれた。横を向くと、オタさんがこちらを見ていた。 「ごめん、ちょっとWISしてて気づかなかった」 「ああ、それは別にいいや。鯖味噌どうしてるか知らない?」 「エミナさん? いや、僕は知らないな。どうかしたの?」 赤部屋を見渡すが姿は見えない。枯葉さんみたいに迷子、という線はこの場合ないだろう。 「最近、なんでか知らないけど鯖味噌元気なくてなー」 初耳だ。一体どうしたのだろう?
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