ファイル3:変革/Trans
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(うわぁ……女の子の部屋だ) 一面ピンクの部屋に僕はいた。 しかし、そういったことを気にしない男もいる。先輩こと赤虎はピンク色のベッドの中央で跳ねていた。 「すっげえ! このベッドふかふかだぜ!」 「これ、先輩! そんなことすると埃が飛ぶじゃろう!」 注意しているのはつくねである。実はつくねの方が赤虎よりアークス候補生になるのが早かった。 「お茶菓子は紅茶とショートケーキでいいですか?」 「あたいこさん、あたしお酒欲しいわ」 「マコちゃんお酒のむのー? じゃあショートケーキじゃなくてフルーツタルトにしよう!」 家主の枯葉さんが食器を用意してくれている中、僕たちはハート型クッションの上に座る。 お酒とフルーツタルトの相性はびっくりするほどいい。 今、枯葉さん宅にいるのは家主の枯葉さんを含め6人。 僕、枯葉さん、チャコさん、赤虎、つくね、オタさん。 枯葉さんは7枚の皿を用意し、2枚を僕の前に置いた。 「……?」 「片方はゼンチちゃんの分です!」 マグは雑食なのでなんでも食べれる。 「ありがとう。ゼンチもお礼言いなよ」 「フ。本来なら僕にゼンチと名付けた張本人にこんなことを言うのは甚だ心外だが、いいだろう。ありがたく頂くことにしよう」 「ゼンチちゃんかわいー!」 「ええい、僕を可愛いとか言うんじゃない!」 素直じゃない奴だ。枯葉さんにツッコミを入れた後、夢中でフルーツタルトを食べ始めているあたり愛嬌はある。
オタさんが感心している。無理もない。これがあのルーサーとは思えないだろう。 この場にいるのはモノリスに触れ、さらにゼンチの存在を知っている、という二つの条件を満たしている面子だ。 「ルーサーは元からイラッとくる奴だったけど、なんか憎めない奴だったしね」 とはチャコさんの言。言いえて妙である。イラッとしても憎めないというのは絶妙のさじ加減だ。 「ゼンチはルーサーのコピーなんじゃろ? 片方は支配層で片方が囚人で、十年以上も経過しておれば変わるものじゃ」 「罪を憎んで人を憎まず! オリジナルは自業自得な死に方してるからもう罪もなんもないっしょ。ゼンチはゼンチだし」 つくねと赤虎がさらにフォローを重ねる。 「そういえば、チャコさん。この面子集めたってことはゼンチ関連?」 「んー、クーナちゃん関連で腹割って話そうと思ったらこうなった感じ」 本題に踏み切る。 「クーナちゃんに3人で面会したけど、ありゃあ燃え尽き症候群だわ」 「燃え尽き症候群?」 チャコさんは漢らしく水割りをあおり、頷いた。
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