「ぷふ〜っ…」
以前よりちょっと伸ばした髪と身体を洗って、湯船でぼんやりする。
はぁ…じわ〜っと疲れが滲み出してく感じ…。
変な音がボクの耳に届いたのは、そんなときだった。
カリカリッ…カサカサカサ…カリカリカリ…
天井の方からだろうか、乾いた音が聞こえる。
例えて言うなら、虫が狭いところで蠢いてる、そんな音。
「もしかして…!」
頭文字Gは勘弁…と思いつつ、そぉっと音の方向へ視線を動かしてみると。
カリガリッ…パキパキパキッ…!
予測の右斜め下を行くものが見えた…つまりは想定外って奴。
そもそも頭文字Gが、配管壊して出てくるなんてありえないでしょ?
「…っ!」
配管の割れ目から見えたのは、仲間内では"ミミズ"と呼ばれているモトゥブの水路に生息がつい最近確認されたばかりのモンスター、ディ・ロレイ。
本物は40mクラスで無茶苦茶大きいのだが、こいつはずいぶん小さい。
前衛職の性か、反射的に左手に身につけているナノトランサーに手を伸ばす、が―。
「あっ…!」
自宅のお風呂だ、当然身につけている訳がない。
しかもまずいことに、こちらの殺気を感じ取ったのかそいつの意識がこっちに向いたのが「分かった」。
ボクらニューマンは精神力に長けてるせいか、時たま相手の心を読み取れる時がある。
当然それは高等生命―ヒューマンやニューマン、ビーストやキャスト―一般に「人間」と言われる種族だけだと思っていたのだけど。
―我等が眷属となれ…―
悪寒に近い、強烈な寒気がボクを襲った。
人間とは相容れない、それでいて高等な精神力を持つモノ達…SEED。
それは有機物・無機物どんなものとも融合し、支配するモノ。
(こいつ…仲間を増やす為にっ?!)
「くぅっ!」
一瞬の均衡の後、一気に行動を起こしたのはボクのほうだった。
が、こっちはお風呂の中。
一瞬、ほんの一瞬、反応が遅れた。
それが、命取りになった。
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