1st Chapter. 生を謳歌する者、死を見つめる者
Cross Point








「そっちへ行ったぞ!」
「抵抗するようなら腕や足の一本や二本折っても構わん、なんとしてでも捕まえろ」
「奴には、我々の研究の礎になってもらうとしよう……」

紅い、大きな影が追いかけてくる。
必死で逃げようと、僕の手を引くのは、同じ背格好の、翠の髪の女の子。
でも……。

「ククク、見つけたぞ小娘……!」

紅い影に襟首をぐいっと引っ張られ、僕と彼女の手は易々と離れてしまう。
そのまま、その翠の髪の女の子は、そのまま――
僕の視界から消え去った。
唐突に場面は暗転する。

「これくらいで制御しきれなくなるとは……」
「役立たずめが……所詮は失敗作ということか」
「そうしますと量産計画は……」
「ふん、低出力ですら制御出来んのでは量産など無意味だ」

――これは、夢。
小さな頃何度も見た……そして今なお続く、悪夢。
夢の結末は分かっているのに。
それでも助けを求めてしまう"僕"は、弱いのだろうか。
辛くて。
悲しくて。
悔しくて。

(……憎い)

そう。
僕は、アイツが憎い。
一人だけ逃げおおせて、一人だけ幸せになって。
何もかもを僕に押し付けて、僕の前から消え去ったオリジナル。
アイツの、名は……。





 







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