「そっちへ行ったぞ!」
「抵抗するようなら腕や足の一本や二本折っても構わん、なんとしてでも捕まえろ」
「奴には、我々の研究の礎になってもらうとしよう……」
紅い、大きな影が追いかけてくる。
必死で逃げようと、僕の手を引くのは、同じ背格好の、翠の髪の女の子。
でも……。
「ククク、見つけたぞ小娘……!」
紅い影に襟首をぐいっと引っ張られ、僕と彼女の手は易々と離れてしまう。
そのまま、その翠の髪の女の子は、そのまま――僕の視界から消え去った。
唐突に場面は暗転する。
「これくらいで制御しきれなくなるとは……」
「役立たずめが……所詮は失敗作ということか」
「そうしますと量産計画は……」
「ふん、低出力ですら制御出来んのでは量産など無意味だ」
――これは、夢。
小さな頃何度も見た……そして今なお続く、悪夢。
夢の結末は分かっているのに。
それでも助けを求めてしまう"僕"は、弱いのだろうか。
辛くて。
悲しくて。
悔しくて。
(……憎い)
そう。
僕は、アイツが憎い。
一人だけ逃げおおせて、一人だけ幸せになって。
何もかもを僕に押し付けて、僕の前から消え去ったオリジナル。
アイツの、名は……。