■Sync Side.
一瞬、色々な想いが交錯する。
お姉ちゃんのこと、今の自分のこと、そして――ここにいる、みんなの事。
「そりゃ考えたわよ?……でも、アタシがやりたい事はそうじゃないなぁって思っちゃって」
「やりたい、事?」
そう。
あたしがここにいなきゃ、できない事。
「ここに居る人達は、過去に何かしら傷を負った人達が多いわ。物理的な傷、精神的な傷、色々ね。
確かに、知識さえあればヒューマンでもニューマンでもビーストでもキャストでも体機能や命は救える……でも、それじゃ心のケアまで手が回らないでしょ?」
「それは……つまり、システム全体の保全という事か?」
「随分機械的な例えするのね……でも、そう考えてもらっていいかも」
やっぱり、ちょっと変わった子だ。
あたしは小さく苦笑して、こう答える。
「心は、身体というユニークなハードウェアを動かす為のソフトウェア。しかもその時々で仕様が異なる、複雑怪奇で気まぐれなプログラムみたいなものよ。
ハードとソフト、両方フォローしてこそ本当の医者だと思うし、少なくともそれが出来るようになるまでは、アタシはここに居るつもりよ」
一瞬、彼女が黙り込む。
つい余計なことを言ってしまった、と反省しつつ、あたしは場を誤魔化すように彼女に声を掛けた。
「んん、なんか恥ずかしい事喋っちゃったわね……。
とりあえず、お薬は1週間分出しとくわ。飲み終わっても頭痛や震えが来るようなら、また来なさい」