2nd Chapter. 偽と、真
Cross Point




 


■Sync Side.


彼女が帰った後。あたしはひとつため息を吐いて自宅兼診療所の扉に「本日休診」の下げ札を出した後、一番奥の地下室へと引き篭もった。そこはあたしのもうひとつの"仕事"部屋。

(……まったく、"仕事"じゃなくて自分の興味でこの端末を動かす羽目になるとは……)

今まで表向きの仕事と、裏向きの"仕事"とは絶対的に分けてきていたし、友人の情報を検索することもなかった。
でも、今回だけは……。

(似てるって言い訳じゃ、理由になんないのよね)

エミーナ・ハーヅウェル。
あたしを助けてくれた、命の恩人でもある憧れの女性。
その彼女に生き写しだった、ティル・ベルクラントという女性。
これは、ハッカーとしての勘なのか、それとも医者としての勘なのか――。

(……ごめんね、エミ)

ネットの海の裏口を駆使して検索すること暫し。やがてあたしの目の前の3Dスクリーンに、二人分のDNA情報が浮かび上がる。

(……やっぱり、か)

検索結果を見比べ納得する一方で、あたしはショックを受けてもいた。
エミーナに姉妹が居るなんて、一言も聞いてなかったし、それに……。
とにかく、これは本人に連絡を取るべきだろう。

ネットワークアクセスの痕跡を丁寧に消してから端末を落とし、あたしは自宅のフォンを手に取った。










|