3rd Chapter. 痛みの先にあるモノ
Cross Point







「少しは気分転換できたかよ?」
「……多少は、ですが」

深夜1時。
閉店時間を過ぎてもまだ居座っていた酔っ払いどもを丁重に放り出し、食器や残り物の片づけが一息ついた頃。いつものように僕と"店長"はバーカウンターを挟んで面と向かって座った。
昨日の昼間に仕事の話をしたばかりだというのに、なんだかこのやり取りも久々な気がした。

「で、どうする?」
「……?」
「昼間の顔色と違って、だいぶやる気に見えんぞ?」

いつもの苦笑にも似た笑みを浮かべ、煙草を燻らせ"店長"が笑う。感情を表に出すという事が分からない僕にとっては顔色が違う、というのは不思議でしょうがない。

「よく、わかりましたね」
「部下の心境ぐらい掴んでおかにゃ、この業界で上に立つ事なんざ出来んさ。――さて、案の詳細を聞こうか?」
「はい」

"Lunatic"への帰還が遅くなったのは、何も動揺していただけではない。
帰りがけに一つ思い立った事があって思案を繰り返す内に時間が過ぎてしまった、というのが正直なところだ。

「クライズ・シティには現在使われていない"廃棄区画"が多数あります。デリート対象の居住区画近くにも、それがあります。
 それとなく対象が興味を引く情報を流し、そこへおびき出した上で狙撃もしくはそれに類する攻撃で消すのが妥当ではないかと」
「ふむ……悪くない案だが、あまり人員は割けねぇぞ?正直なところ、お前のデリートだけじゃなくていくつか同時進行してるしな」
「それは理解しています。最悪、僕一人でもセンサを先行で設置しておけば問題はないはずです」









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