3rd Chapter. 痛みの先にあるモノ
Cross Point







"店長"に勧められるまま一杯冷えたワインをあおった僕は、多少ふわ付いた足取りで部屋に戻り、暗闇の中ベッドに大の字で寝転がる。

(……)

空調の少しだけ冷えた空気が、火照った体にちょうど良かった。

(どうすればいい。どうしたらいい?)

気ばかり焦るが、酒精が入ったせいか思考は空回りするばかりで、代案なんて出てこない。
おまけに視界まで歪んできて、もう訳がわからない。

「……はぁ」

人知れず、火照った身体の胸の奥に溜まった熱い空気がため息として漏れた。

("店長"……)

僕の育ての親であり、表・裏稼業全部含めての師匠でもある"店長"。
バー"Lunatic"のマスターであり、"Lunatic"チームの小隊長。
"店長"の作戦は今まで僕らチームの窮地を何度も救ってきたし、"店長"が僕らチーム所属員を見捨てるなんて事は一度もなかった。でも今回ばかりは……分からない。

(……一体、貴方は何を考えて、何をしようとしているのですか……?)

僕は"店長"に見限られたのか?
それとも、 "店長"が組織を――"イルミナス"を見限ろうと?

(……いや、どちらもありえない)

結果として"処分"されるのが 、一人か、複数人か、の違いでしかない。 被害を嫌ういつもの"店長"のやり方じゃない。
更に今回は時間を掛ける事で解決するタイプのミッションでもない。猶予は左程無いはずなのだ。それを――。

(こんなに悠長に構えていては、自ずと計画が瓦解する……)

前に進むべきか、否か。
頭痛と回る視界に鬱々としたまま、いつしか思考の檻に捕らわれながら眠りについた――。










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