僕が倉庫で"店長"にドヤされてから、更に数日。
あれから更に詳細なガーディアンズ・コロニー内の構造図を手に入れてひたすらシミュレーションを重ねてみたものの、コロニー内ではどうやっても監視カメラに現場を割り出される可能性があった。
「くそっ……やっぱり無理、か」
気ばかり急くが、事態は一寸たりとも進まない。
コロニー内では諦めるしかないが……ではどうすればいい?どうしたらいい?
誰にも邪魔されずに、あいつだけを、僕の目の前に誘い出す方法は――!
その時、ふとホログラムTVが映していたパルムの地図が目に入った。
「――!」
そうだ。
コロニー落としで壊滅的被害を被った街が近辺にあったはずだ……!
慌てて手元の端末で検索して――出た名前は、ローゼノム・シティ。
(確か、被害調査はひと段落したけど被害者調査や復興自体は半ば放棄されていたはず……)
端末で各種情報を表・裏、各種の手で検索しながら、急速に考えがまとまっていく。
ガーディアンズの被害者調査があまり進んでいないこのエリアなら、調査協力依頼目的で呼び出すのもおかしくはない。早速パルムの監視網ネットワークへ侵入し確認してみると、予想通り該当エリアの大半のパワーラインが寸断され、監視カメラ等の保安機器は軒並みダウンしているようだった。
(監視カメラ、端末腕環用ネットワークも殆どがダウンしてる、か。これなら――)
大半の建物が津波に流され、津波から辛うじて生き残った建物にもホームレスやならず者、敵生成物が寄りつきつつあり、パルム新市街周辺のスラム街に近い状況が出来上がってきているらしい。
ガーディアンズのローゼノム方面への出動記録をザッピングしてみても、落下直後の数ヶ月間は被害者や今の新総裁を探す為の大規模な捜索があったようだが、今となっては単発的な捜索や治安維持の為の警らが行われる程度のようだ。
(行ける……行けるぞ。ここでなら、誰にも邪魔されず、アイツを殺れる……!)
「おぅ、ティル。まだやってたのか?」
「"店長"……」
カウンター上で検討していた僕は、"店長"が脇から差し出したコップに気づかなかった。
先日の件もあり、なんとなく気まずくてカウンター上の飲み物に目をやりつつ、僕はため息をついた。
「これは……モスコミュール?"店長"、何度も言うようですがアルコールは……」
「言うと思ったぜ……よく見てみろ、ただのジンジャーエールだぜ?」
「え、あ……すいません」
コップを手に取り、口を湿らす程度に含む。
ふわりと口の中に漂った涼やかな香りは、確かに僕が好きな酒精の混じらないジンジャーのそれだった。
僕の座るカウンターの向かいに座り、煙草を取り出し一服。オイルライターと煙草の香りが部屋に広がり、旨そうに紫煙をくゆらせた"店長"は、僕を見てニヤリと笑った。
「で、どうだ。いい案出来たみてぇだが?」
「えぇ……誰にも邪魔されずにアイツを誘い出せそうな場所が、見つかったんです」
「くく、まるで恋人に会いに行くかのような口振りだな」
「な、何を言ってるんですか、"店長"!」