■Owner Side.
結局あれもこれもと買い込んだ結果一人で抱えられない程の量となった為、ティルの運転する装輪型小型ヴィークルに積んでみた所――今度は俺が載るスペースが無くなり、仕方なく最低限持って帰れる野菜類を持って、歩いて帰るついでにいつも贔屓にしているウドン屋へ夜食を食いに行くことにした。
(まぁ、うちは元々大人数で飲み食いする所と違うからなァ……)
ミーティングに使う為部屋の広さはそこそこあるが、酒はともかく食材の量は左程確保していない。いつもの連中がクダを巻く程度なら十分補える量だったのが、先日の人数では食材は勿論の事酒すら粗方消費され尽くしてしまった、というわけだ。
( あの匿名の電話、こうやって一人で買い物に来させるまで想定して――?
いや、そりゃ無ぇか。 しかし……まさか自分が乗れなくなるまで量があるとはなぁ)
必要なものを必要な分だけ買い込んだのだが……どうしてこうなったのやら。
苦笑いしつつ煙草を吸おうとちょっと目を離した瞬間、腹に衝撃を受ける。
「うぁっ?!」
「ぉうっ?!」
若い女、少し低めな声で悲鳴が挙がる。殺しを請け負う人間の身のこなしではない。
少しでも殺気を放ってりゃそもそも直ぐに気づくはずが、ここまで接近されて気づかなかった事も苦笑いを増長した。
ったく、誰だよこんな時間に俺達のシマで突っ込んでくる奴ぁ?
「あぃたたた、ごめんなさい……って、貴方は」
「いいって事……おう、こないだの嬢ちゃんか?」
目の前を見れば、緑の髪、青い瞳――こないだの嬢ちゃんが、そこにいた。
「ぇ、と……大丈夫ですか?何処か痛いところでも……」
「ぉ…あぁ、すまねぇな。よく似た娘を知っててよ?」
嬢ちゃんが手を差し伸べて、ハッと気づく。いかんいかん、つい呆然としちまった。
――やはりこの娘、うちのティルと似すぎている。最早生き写し、といっても過言ではない。
つーことは、此処で逢ったがなんとやら、ってか。
「……ふむ、こんなとこで嬢ちゃんと出会ったのも何かの縁だ。思い切りぶっ飛ばしちまったみたいだし、お詫びになんか食ってくか?」
「ぁ、えーっと……」
嬢ちゃんは少々逡巡するような素振りを見せたが、
「それじゃ……おぅ、丁度いい屋台も出てるし、そこにすっか」
そういって其方へ歩き出すと、結局ついてきてしまった。
(おいおい、そんな一言でホイホイ着いて来ちまうのかよ?
こっちが拍子抜けしちまう位今時純粋な娘だな……)
まぁいいか。
久々にちょっと変わり者の大将が作るコシの強いウドンを堪能するとしよう。小難しい事考えるのは後だ後。
腹が減っているのもあり、俺はとりあえず頭の中から問題を追いやって暖簾をくぐった。
「へいらっしゃー!」