4th Chapter ツイン・ジーン
Cross Point







翌朝。
古い端末からプロクシを偽装して、1通の偽依頼メールをガーディアンズ・ネットワークへ送信。
成功するにしろ、失敗するにしろ――恐らく、これが僕の最後のミッションになる。

「"生きる価値"って奴は、分かったかよティル?」

いつの間にか背後に来ていた"店長"が、僕にそう問いかける。
一晩、ずっと悩んで悩んで悩みぬいて……結局、分からなくて。

「今も……分かりません。でも――多分これから、分かりに行きます」

生きる価値を見出す事。
それは僕のような人間にとって、自分の立ち位置すら変わってしまうかもしれない事。
それがどんなに危険な事か、分かってはいる。
でも……そうしなければ、もう何処へも進めもしないと悟ったから。

「イイ顔になりやがったな……お前の道を―お前の手で、見つけてこい」

"店長"の一言にひとつ頷き。

「ありがとうございます。――行って、きます」

一言、礼を言うと。
"店長"は一瞬目を見開いた後、微笑を浮かべ一つ頷いてくれた。

(……)

僕は生まれて初めて、"組織"の意志ではなく、自分の意志として戦いへと赴く。
それが、どんなに心細いか、不安定な物か。

(今更ながらに、それに気づくなんて……ね)

"Lunatic"の裏手にあるガレージにあるエア・バイクに跨り、一呼吸。
正直、出ていくのが怖い。
それと同時に、無性にアイツ――エミーナ・ハーヅウェルに会いたくなっていた。
アイツに会えば、戦いを介して何かが分かる。そんな気もしていたから。

(……!)

意を決して、カギを挿入しエンジン動作位置へ。
右足でキック。フォトンエンジンの鋭い排気音が聞こえ、続いて半重力機構の稼働を確認。
頭の鈍痛は収まらない。相変わらず、アイツと戦う事を身体は拒否している。
でも、会いに行かねば、戦わねば、僕は消える。存在ごと。

(――さぁ、往こう)

恐怖感と、高揚感と。
そのどちらもを感じながら、僕はガレージのシャッターを開く。
そして、エア・バイクのアクセルを捻り、バンクしながら全力で早朝のパルム市街へと踊り出た。












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