■P.B. Side.
「……無茶しやがるなぁ」
ケイの話を聞き終えて、溜息とともに俺が洩らした第一声はそれだった。
ったく、一言でも相談してくれりゃ、表立っては行動できなくとも、裏からのバックアップくらいは出来たろうに……このタイミングじゃ、もうまともに動けやしねぇ。
「……そろそろ本題へ入らせてもらおうか。
つまり、ウチの奴が勝手に動いてるって事に対して"黙認"しろって事かぃ?」
黙認――肯定するなばら事態の推移や上の命令如何によっては、一人の人命を軽視する事にもなるわけだが……機動警備部3課を預かる身以前に、人の上に立つ者として、こういう事をまず言わねばならない自分に腹が立つ。
だが、ケイは肯定はしなかった。
『いいえ、そういう事ではないわ……多分このままじゃ、どっち道あの子の命はない』
「……」
『こっちも彼女の行方は全力で捜索中。だから、貴方にも出来る限り動いてもらいたいのよ』
「……それ聞いて、安心したぜ」
現在のガーディアンズ上層部には新総裁をはじめとして、現場が見えていない連中が確実に存在している。更に水面下ではあるが、ガーディアンズ存続の為に"イルミナス"と取引をしようと考えている輩もいると聞く。
今回の行動が漏れれば、そういった奴らの格好のエサに成りかねないだけに……内密にあいつを援護せねばならないだろう。
「……とりあえず少なくとも、アンタが"こっち側"で一安心ってところだな。分かった、こっちも出来る限り準備しておく」
『それじゃこのお礼はいずれ、精神的に……』
「おうおぅ、せいぜい高めにツケといてやらぁ」
ヴィジフォンの受話器を放り出し、一つ溜息。
灰皿からシケモクを一本つまんで愛用のオイルライターで火をつける。
(……あの、バカ)
紫煙を天井に吹き上げてから、再びヴィジホンの受話器を取り番号を入力していく。
(学生時代のウィルも頑固で意地っ張りだったが、その妹も……血が繋がってねぇくせして相当なタマだよな……)
「……あー、俺だ。P.B.だ。
はぁ?所属?機動警備部3課課長、ピップ・ベルナドットだって言やぁわかるか?直通コール番号なんて一部の人間しか知らんだろうが。あぁ、んでおたくの光鬼は居るか?ンじゃとっとと代わってくれや。
…………おう、久しぶりだな光鬼、元気でやってるか。今忙しいか?暇?ちぃと頼みたい事があるんだが――」