Final Chapter. ソシテ、ボクラガノゾムコト
Cross Point









――ティルとエミーナが出会う当日。


■Yoshio.Side

「整備班長、どうにかならないですか?」
「まともにテストもしてねぇ機体を飛ばせとか、無理通り越して無茶だぜ嬢ちゃん。
 完全分解してる機体を組み上げ直した後、エンジンやらジェネレータやらの出力安全マージン取るだけでどんだけ手間が掛かるか、知らねぇお前らじゃあるまい?」
「そこは、分かってるんですけどぉ……」

おやっさんの答えに、口をへの字にしてしょんぼりするアタイ子。
昨日は余剰機体がオーバーホール中で飛ばせず、仕方なく宇宙港からシャトルを利用してパルムへ赴き、練炭とオタが情報部から回してもらったデータを基にリストアップした場所――エミりゃんの通信送信元と思われる場末のネットカフェやゲーセン、その他諸々――を手分けしてあちこち探しまわったものの、大半はフェイクや中継地点に過ぎず、結局成果は出せなかった。
通信元の足跡を辿る方は引き続き練炭とオタと通信系に強い手すきの連中に捜査してもらう事にして、今日になって改めて輸送艇の都合をつけてもらおうと整備班長のおやっさんに直談判した俺たちではあったんだが……。
おやっさんの答えは、やはりNOだった。

「唯でさえ最近のガーディアンズは人手不足資金不足と来てる。通常のローテーション組ますのだって正直ギリギリなんだ。昨日みたいに定期シャトルでどうにかできないもんなのか?」
「あんまり詳しくは言えないが、人を運びたいんだ。それも緊急で」
「おいおい、天下のガーディアンズが運び屋の真似事かよYoshio.?
 まぁ、そこには目を瞑っておくにしても、テストも不十分な状態でお前さん方を宇宙へ送り出すにゃ、ちぃとこいつらは不安なんだ」

残念そうにつぶやいて、ドックコントロールルームの分厚い耐圧ガラスの向こうに鎮座している
組みあがった機体を優しげに見るおやっさん。
元々隊員が身に着ける装備についてすら大半が隊員個人のポケットマネーで更新・強化するような状況だったところに、こないだのテロで各地施設、更にはガーディアンズコロニーそのものに損害を受けたせいで、今やガーディアンズの財政は完全に火の車。
 おまけに新総裁が長期間まともに決まらず、決まってもそんな状況では予算がまともに回って来るはずもなく、人命に直接かかわらない――ホントのところはかなりかかわってくる訳だが、整備班の腕が超絶なお蔭で奇跡的に機体側トラブルでの墜落はゼロ――ロートル輸送機の更新なんて夢のまた夢の有様だ。

「そこを何とか、っつーても無理だよなぁ、やっぱり」
「命の保証をせずに送り出すってぇのは、整備を長年やってる者としては我慢ならんし、なによりそれは恥だからな……すまねぇが、分かってくれ」
『それじゃ、一機俺が都合しよう。おやっさん、今整備に動ける人間は?』

空電交じりでいきなり割り込んできたのは、数少ない若い男の知り合いの声。
なんかしらねぇが、ガーディアンズの同僚にはやたら女子供が多いんだよなぁ……って、そんな事は今どうでもいい。なんでここに居ないお前がこの会話聞いてるんだよ!

「ったく、盗み聞きは良くねぇぞコーキン!情報部汚い流石情報部汚い」
『コーキンだけじゃないわよぉ?残念でしたー♪』
「マコまで何やってんだよ……」

なんか、一気に疲れちまった気がするぜ。歳かオレ?

「コーキン、貴方こっち来てて良いの?そっちも色々内偵とか本職の都合とかあるんでしょ?」
『おいおいてんてー、俺ら情報部はガーディアンズの秘密警察かなんかか!?
  ……まぁ最近のガーディアンズは色々揺らいでるとこもあるにゃあるが、まぁそこはそれ、って奴さ』
「それより、一機都合できるって言いましたよね?!今どこにいるんです二人とも?」
『その声はアタイ子ね、ちゃんとやってるようで関心関心。今アンタらが居るドックの真ん前で駐機体勢で待機中よん。おやっさん、補給と調整で機体をドックに入れたいんだけど、ちょっと開けてもらえないかなぁ?』
「ったく、どいつもこいつも無茶振りしやがって!
 シーゲル!大至急ドックの半端部品かたせ!緊急で一機入ってくるぞ!3班はハンガーへ機体移動急げ!出力テストは後回しだ!
  光鬼、そっちの機体にガタが来てなきゃ人員は十分回せるはずだ。誘導ビーコン発信すっから5分待て!」
『rgr.、相変わらず動きはやくて助かるぜおやっさん!』
「褒めてもお前らに出るのは始末書位だ!後で覚えとけよ!」

言葉ほど怒った風でもなく、寧ろ生き生きとしてテキパキ指示をし出すおやっさん。
そのおやっさんから笑顔で俺らに激が飛ぶ。

「おらお前ら、ボサッとしてねぇでとっとと整備に邪魔な機体引き取る用意しろぃ!」
「すまねぇ、おやっさん!」

















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