Final Chapter. ソシテ、ボクラガノゾムコト
Cross Point











■Yoshio. Side.

コーキンがどうやってか掠め取ってきたこの高速輸送艇は本気でメーカーから引き渡されたままの物らしく、整備―大半が出力調整と装備品関連―に少々時間がかかるようだった。
なるだけ急いでもらうようにおやっさんと整備班に頭を下げ、俺は整備班員と入れ替わる様にタラップを駆け降りて来た2人を出迎える。

「とりあえず、あたしらの仕事はこれで粗方片付いたかしら。後は"ボス"達に託すわ。
 正直頭使いすぎてあたし疲れちゃったしぃ〜」
「……マコ、今まで何やってたんだよ」
「ん、コーキンと一緒に"戦争"かな。みんなが動きやすくなるように、さ」

目の下に隈までこさえて、盛大に大あくびかますマコ。
こっちはエミりゃんの捜索で手いっぱいだったってのに、どこ行ってたんだと思っていたが……この二人は更にめんどい連中を相手にしていたようだ。
政治的判断とか上層部へのお膳立てとか、そういったシガラミは俺はそもそも苦手だし、前線に立つ機動警備部にとっては時として、というか、正直邪魔以外の何物でもないが、俺らがこの機体を使用して好き勝手暴れまわっても最悪始末書位で済むようにしてくれていることを思えば、あまりきつい事は言えんわな。

「……なるほど、そりゃ悪かった」
「取り敢えず、1週間程度はガーディアンズやパルム警察、統合軍からの妨害は入らないと考えてもらっていい。申しわけないが、それ以上の時間は取れなかった」
「1週間……ですか」

顎に手をあて考え込みつつ、てんてーが呟いたツッコミに、コーキンは苦笑を浮かべる。

「てんてー、皆まで言うな。確かに救出と後始末まで考えると日程が圧倒的に足りないのは認める。これでも情報部と統合調査部が割と本気で動いた結果なんだ」

そう言って、彼は溜息を吐く。

「ホント、アタマに近くなるほど、先を見据える柔軟性が無くなるってのは本当だな。ウチのアタマも例外じゃない。あのままじゃ、遠くない未来にひと騒動あるかもしれん」

コーキンの言葉を受けて、マコも機嫌の悪さを隠そうともせずに吐き捨てる。

「……あのライアとか言う甘ちゃんが今のままで事を進めてたら、周囲巻き込んで十中八九確実にあるわよ。正直、そういう事態になる事をあんまり考えたくないけど」
「……」

コロニーが落ちて前任の総裁が行方知らずになって3か月もたってようやく次の総裁が立ったものの、そいつは先任のょぅι゛ょ…もとい養女の、ライア・マルチネス。
普段の俺の行動もあまり人の事言えたもんじゃないが、今の総裁が過去にしでかしてきた履歴を見るに、同じビーストとしては情けないを通り越して、良くもまぁコイツがトップに立てたもんだと失笑せざるを得ない。
俺みたいな奴ですらそんな評価を下すような総裁だ、支持がだだ下がりになるのは当たり前。今後はそういう問題も考えにゃならんだろう。
……ま、一介の機動警備部員である俺には、そっち方面ではなーんも出来んのだが。

「後は"イルミナス"だが……そこはそれ、特任班のキロ隊とノラさんが援護する」
「ノラさんも?」
「本人たっての希望だって。ホント鯖味噌の奴、慕われてるわねぇ」

慕われてるのは確かだが、その一方で多少女運が悪い気もするが……?
まぁエミりゃん女だしな。女運悪くたって問題ないだろ。多分。

「伝達事項はこちらからは以上。
 機体のセットアップが完了次第、エミさんともう一人をパルムから掻っ攫ってとっととコロニーへ帰還しろとの命令だ。何か質問は?」

コーキンの言葉に俺・アタイ子・
てんてーが一斉に敬礼する。
質問が無い事を確認し、マコがひとつ頷いた。

「さぁ、これから忙しくなるわよ!気張って行きなさい!」












|