■Kareha Side.
「――って気合入れてみたはいいけれど、そういえばパイロット資格あるのアンタら?」
今更と言えば今更なマコ姐の物言いに、私達は苦笑い。
てんてーは非常時――えみなさん達に何かあった時の救護役だからそちらからは絶対に外せません。
と、なれば……。
「"ボス"はその手の資格、持ってるの?」
「一応持ってるが、ゴールド表示のペーパーダゼ☆」
「……いつの時代の免許証よ。大体、普段だって警邏で大型機操縦するでしょうに」
マコ姐のツッコミに、"ボス"は居心地悪そうにブツブツと言い訳し始めます。
「正確に言えばソロでの操縦ならOKなんだが、人を載せて運ぶ場合は免許が必要でな。
あいにく俺はその手の資格が……その、な」
「コーキンは?」
「俺は持ってるが、後始末でこの後情報部へとんぼ返りだ」
「後は――アタイコさんか」
マコ姐の言葉に、自然と皆の視線が私に集まります。
正直、こんな大事な時に私が頼りにされるなんて思ってもみませんでした。
えぇ、確かに私はその"大型輸送機免許"を所持しています。
でもこれは、いつか皆でニューデイズのクゴ温泉へ慰安旅行行けたらいいなぁと思っての免許取得だったのは秘密です。
もちろん、温泉でくつろぐえみなさんやノラさんを始めとした皆さんの美しい裸身を見たいとか、そう言うのではなくて、えぇ。やましい気持ちは一切ありません。
「わ、私――」
「あ、持ってないなら無理しなくていいのよ?ほらコーキン、アンタ男でしょ!」
「ムチャいうなっての!それに男と今の状況あんまり関係ねぇ!」
「わぁぁ、待ってください待ってください!私っ、免許持ってますからっ!
私が、皆さんを送り届けます!そして――えみなさんを助けますッ!」
脳裏に浮かんだ桃源郷を眺めていたら話が勝手に進みそうになり、慌てて挙手します。
「……ほ、ホントに大丈夫なんだろうな?無理して言ってないか?」
「アタイ子、アンタ嘘言ってないでしょうね?」
「カレハさん、流石に途中で堕ちたりするとシャレにならないよ、今回?」
「なんで皆さんは私に対してそう厳しいんですかぁ!?」
「整備完了!いつでも出せますッ!」
整備班員さんの声を聞きながら、私は涙目でタラップを駆け上がるのでした。