Final Chapter. ソシテ、ボクラガノゾムコト
Cross Point










「――30年程前の事だ。
  A.M.F.とパルムはおおよそ120年程前からキャストによる理知的で効率的な運営が行われてきたが、A.M.F.の中に、これが異常な状況であると危惧し極秘に研究会を設立した男がいた。
  それ以前からもその都度ヒューマンの人材を中央に送ろうという動きはあったが、結局実現していなかった。彼はそれを実現する為に一つの秘策を打ち出した。
  ――曰く、古のニューマンを作成したデザインヒューマン計画の如く。キャストよりも精緻的で、ニューマンよりも理知的で、ビーストなどよりも頑強で、且つ生産性もコストも安い、新しい兵士を造り上げ主力とし、後にヒューマンの主権を取り戻す――後にプロジェクトRDHと呼ばれることになった計画だ。
  100年前のニューマンの研究成果と、現在まで続くバイオテクノロジの技術進歩は、当時の計画に比べ物にならぬ程研究の進捗を我々に見せてくれたが……基礎技術が完成した頃、一つの事件が起こった」
「……それ、は?」
「エミーナ・ハーヅウェル、貴様もここまで辿り着いたなら知っていよう?貴様の父、アルティア・ミュールの失踪だ」
「……!」
「主任研究員の失踪は、見事に我々の手を煩わせる結果となったよ……研究は停滞し、計画は一時中断を余儀なくされた。
  その間に、奴はあろう事か自身の研究を自らの子供に施し、強化体を造り上げた……それが、そこのティル・ベルクラントと――そして、エミーナ・ハーヅウェル。まさか貴様も、調整体だったとはな?」
「……、ッ」

……な、に?
頭痛が更に酷くなる。

「ティル・ベルクラントの"性能"が、想定上と実際とで相当に差があった事に我々イルミナスは早くから気づいていたよ。
  だが、貴様らの創造元である、アルティア・ミュールが残した資料には、それを解くための手段は一切記載が無かった。
  その"鍵"を、貴様が持っていると我らが知ったのは……ここ最近の事だ。遅すぎたのだよ、何もかも、な」
「何……故、その時点で、ボ、クを……浚わなかった?"鍵"が揃えば、研究だって――」
「言ったろう?遅すぎたのだよ。
  それに、"鍵"の生死は関係ない……つまりはそういう事だ。
  さぁ、お話は終わりだ。そして――この"茶番"も終わらせるとしようじゃないか、出来損ない共?」

ガンガンと、割れるように痛む頭に、よみがえる一つの光景。

そう、だ……。
僕、は……エミーナ、の……。

「僕は――なんて、事を……」
「ルシー、ダ……!」





 







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