Final Chapter. ソシテ、ボクラガノゾムコト
Cross Point











■Nora-neco Side.

数ばっかり多いマガシコピーを片付け、ようやく目標地点へ辿り付いた時には、既に予定から5分も遅れていた。
ホントにアイツら、唯のお邪魔虫にゃ!

『……ッ!、キロ1、前方300m先に二つの熱源反応。
 一つはヒト女性、もう一つはキャスト……いや、パートナーマシナリーサイズか?恐らく戦闘中』

手持ちのセンサーで勝るキロ2――ソフィアさんが報告してくる。
そんな、もう始まっちゃってるだなんて……!

「ソフィアさん、反応は2つのみ?エミにゃのビーコンは?」
『うん、2つだけ。電波状況悪いみたいで、エミさんのビーコンはまだ受信出来てない』

反応、2つ。
一つはキャスト……もう一人はどこに?

『ノラさん、済まねぇが先行偵察を頼む。キロ2は俺と一緒に待機、敵勢力が認められた場合は即座に撃て』
『りょーかーぃ!』

無事を祈って、遮蔽物からそっと確認すると……そこで戦っていたのは。
エミ姉に印象のよく似た、紅い髪の女ニューマンがGH490モドキへ繰り出すダブルセイバーを使った攻撃の分厚さと苛烈さに、私は手出しも出来ず、只見守るしかなかった。
時にはまるでWセイバーが彼女の手足の延長であるかのような錯覚を覚える程にリーチを伸び縮みさせて敵を穿ち、時には分厚い面としての防御をしながら、それでいて高速で重い攻撃を繰り出していく。まさに変幻自在だ。

「ノラよりキロ1、熱源は対象Tとパートナーマシナリ490と判明。対象Eは発見できず」

『なんだありゃ……?!
 ニューマンが――いや、生身の身体であんな動きが出来るものなのか……?!』

遅れて確認したソフィアさんが呆然と言うのも無理もない。今目の前で起こっている事が現実だと、私も受け入れることができなかった。
ケイさんが掴んだ情報が確かならば、あの子は"プロジェクトRDH"のプロトタイプ。闘う為に生まれた素質と、それだけでよしとせずに日頃の訓練を積み重ねてきた成果。それがこの限界を超えた速度に繋がっているのだろう。
しかし――。

(……大丈夫なのかにゃ?)

そう。さっきから感じる違和感はそれだった。
目の前で展開しているのは、およそ生物としては限界以上の速度下での戦闘。キャストですら全力戦闘は負担が大きくて一定の制限が掛かるのに、生身でそれを実現しようとすれば――。

(……!!)

彼女が纏う紅い霧が、一層濃くなる。
てっきりフォトンの余剰放射かと思っていたそれは、ある臭いを微かに運んできた。
それは鉄錆のような。嗅ぎ慣れた、それでいていつまでたっても慣れない、凄惨な臭い。

(血の、臭い……?!)

彼女が纏っているのは、自らの身体から流れ出た血で出来た霧だった。彼女の身体中の毛細血管が過負荷に耐えきれずに裂け、出血して。あまりに高速で動いている為に飛沫が霧となっている。

(このまま戦闘を続ければ……恐らくは)

神経や筋組織、骨格そのものにも確実に大きなダメージが残る。
それどころか……。

(死ぬ可能性だって……!)

それと、もう一つ不安な点があった。

(エミ姉は……どこに居るの!?)

 








 







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