「――"店長"」
僕が病院で目を覚ましてから数日が経過した頃、僕はようやく現状を飲み込む事ができた。
病院が立つ公園のすぐ近くの高台にある庭園墓地。その中にひっそりと建つ真新しい墓石の前に、松葉杖を突いて僕は立った。
最も、あの後の現場検証で"店長"の遺体は上がらなかった上、元々遺品らしい遺品も殆ど無かったので、今ここにあるのは墓石のみと言った方が正しいのだけど。
「……」
あの日。
"Lunatic"は、僕が出た後に襲撃を受けて跡形もなく破壊されたという。
なんとか脱出に成功した"店長"は、僕の居場所へ駆けつけて――後は僕が覚えている通りだ。
あの時の僕の行動は、間違っていたのだろうか。
結果、僕は――仲間を、"店長"を、見殺しにしたも同然で……。
認めなければならない気持ちと、認めたくない気持ちと。
様々な温度の想いが、思念が、僕の心中を渦巻く。
「……"店長"、ごめん。やっぱり僕、アイツと……」
やっぱり、このままじゃ僕は先に一歩も進めない。
僕は、不器用だから。本気でぶつからなきゃ、分かり合えない。
ぬくもりと、想う心を教えてくれた、エミーナを知る為に。
"父親"だった――"店長"の弔いの為に。
「……もう一度。
"店長"。今度はエミーナと一緒に、ここへ来ます」
一つの決意を胸に、僕は墓石を後にした。