epilogue...
Cross Point





 



 

攻め込み、攻め込まれ。
防御し、防御され。
回避し、回避され――。
そして、一進一退の膠着状態のまま、開始から随分時間が経った。

(……君は、本当に諦めが悪いんだな)

内心で、思わず苦笑してしまう。
自分が思ったことを、決して捻じ曲げず、貫き通す。
それがどんなに難しいことか。
それがどんなに大変な事か。
解らない君じゃないはずだ。

(でも君は……)

それを当然のように飲み込んで、一歩をこちらへと踏み出してくる。

「一緒に居る気は無いの?! 一緒の方が、前みたいな事には――」
「くどいよ!僕は――もう君を巻き込みたくないッ!」
「こっ……この、分からず屋ああぁぁあ!!!!」
「分からず屋は、どっちだよぉ!!!!」

本当に、分からず屋だ、君は。そして、僕も。
全身が熱をもって、汗が滝のように流れ落ちていく中。
僕はエミーナを正面視界に入れて、睨み付ける。

(……ッ)

僕がどれだけ君の事を心配しているか、僕がどれだけ君の身を案じているか。
……きっと君は、僕が思っている事すべてを解ってて、それでも敢えてこう言うのだろう。
――一緒に、往こう、と。

(でも……ッ!)

――冷えていくエミーナの身体。あの冷たい感触だけは、僕は一生、忘れる事が出来ない。
もうあんな思いは、二度と御免だ。解ってくれ!
だから、僕は――。

「僕は、君の事なんか……ッ!」

こうして彼女を否定する他、無いのだ。本当は、そんな気がなくとも。
僕は、不器用だから。こういう事でしか、彼女を守れないから――。
そう思いつつ、僕は大上段から全力の鋭い一撃を、繰り出す。
これで、終わりにするつもりで。
だが……。

「ボクは、キミの事を……ッ!」


叫ぶエミーナの手から、ダブルセイバーが手放される。

「!?っ」

しまった!と思った時には、もう遅かった。

(そんな……最初からこれを狙っていたとでもいうのか?!)

エミーナの無手の広げられた両掌に光が集まり、ナノトランサーから展開された訓練用ナックルが包み込んでいく。
一瞬の後、彼女の金属とフォトンに包まれた剛拳の右手が、こちらのダブルセイバーをがっちりと固定する。

「くぅっ!?」

今からでは無駄な足掻きと解っているが、せずにはいられなかった。
ほぼゼロ距離、彼女の左拳が僕の右脇腹へと吸い込まれるように伸びる――。







 







|