ノラが裏で手を回してくれたのか、はたまた課長が気を回したのか。ボクの依願はあっさりOKが出て、2週間の常駐警備部出向を命ぜられた。それが3日前。
クライズ・シティ内の警邏任務に就いてから、ノラは毎日昼食時にクライズ・シティの隊員食堂まで来てくれて、機動警備部の状況を教えてくれた。
そして、今日もボクらは並んで昼食を取りながら、彼女の話に耳を傾けていた。
ボクの方は先日の狙撃の後、何かあったというわけでもない。相変わらず犯行声明などもないし、その後周りでは事件は起こらず、平穏無事に過ごせている……が、でもこれはあくまでコロニーでは、の話。
ノラの話では、昨日もパルムで殺人事件があったばかりで、パルム警察及びパルム常駐警備部、そして機動警備部は相変わらず忙しいようだった。
「そいえば、隊長が変な事言ってたにゃ」
「変な事?」
「ここの所パルムで発生してる殺人事件、やり方が徹底してる割に、被害者も手順もデタラメ過ぎるって」
「デタラメって……単に無差別犯って事じゃなくて?」
「調べてみるとぜーんぶ、予め綿密に計画されてる犯行手口なのにゃ。そもそも、衝動的な動機に対して計画的な行動なんて、普通取れにゃいでしょ?」
「それは……確かに」
それは考えてもみなかった。
「一見散発的な事件に見せかけた、計画的連続殺人って事?」
「その可能性が高いけど、確証がまだ取れないらしくて……今被害者のリストから情報部が再度情報を洗い出してるみたいにゃ」
「ふむ。暫くは後手に回らざるを得ないか〜」
結局元を摘み取るか、若しくは次に誰を狙うのか分からなければ防御のしようもない。おそらくまた起こるであろう事は分かっているのに、それを食い止められない……やるせなさにため息を吐いた時、端末腕環が電話の着信を告げた。
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