Cross Point
2nd Night...[ユラグオモイ]



 




「ふわ〜っ……はぁ」

寝不足気味の目をショボショボさせつつ、ボクはベッドのに身体を投げ出して大きな欠伸をした。
あの昼食の後に、急遽コロニーに居た3課隊員の内班長以上が呼び戻され、会議だの今後の捜査の説明だので解放されたのはついさっき。
実は、ようやく違法薬品売買の容疑者が口を割ったとの連絡があったのだ。一つはやはり、薬品の密売に関与していた事。そしてもう一つは、意外な所に関連性があった。自分の身の安全を要求した上で、容疑者が語った内容は――。

「――証言によれば、どうやら奴さんは過去とある違法研究に使う薬品開発に手を染めていたとかで、その関連で、最近その研究の"残り火"を消しに回ってる奴らが居ると噂を聞いたらしい」
「容疑者が聞いた噂を信じるんですか、課長は?」

比較的若い、ヒューマンの男性隊員が不平そうに言うのを、課長――PBは苦笑いで答える。

「まぁ、俺も妄言かと最初は思ったんだがな。話中に今朝殺されたガイシャの名前が出てきたとあっちゃぁ、全く無関係だと見過ごせんよ」
「!」

そう、あの容疑者は1週間も前に拘留されていたのだ。知らなければ、名前が出てくるはずもない。

「ついでに、その研究って奴なんだが……これがまたよく分からん内容でな。専門家の見解では、身体強化技術の一種じゃねぇか、って話なんだが……今一要領を得ん。
そっちは情報部で引き続き洗ってもらうとして……」

――捜査や護衛がやりやすくなったのは大きな進展、とは言え、相変わらず相手は見えてこない。
今分かっているのは、相手がどうやら何らかの実験情報の抹消を狙っていると言う事と、ボクとウィル兄以外の狙われた人間は……全て殺されているという事。

(……わざと泳がせてる?)

何の為に?その必要は?
一般人ならともかく、ボクらはガーディアンズ。自惚れる積もりはないが、ある程度の権力もある。実際にこうして捜査もしているし、こちらの動き方によっては相手は逆にリスクを高める事に――いや、寧ろリスクしかないようにも見える。

「……わからないなぁ」

呟いて寝ころんでみるものの、良い考えが浮かぶはずもなく。

「っと。とりあえず、ノラの夜食用意しないとね」

優先順位を思い出して腹筋の要領で立ち上がり、台所へ向かおうとして――そこで倉庫の予備武器をつまみ食いしようとしていたフィグとチィを見つけてしまったのは、また別の話だ。
とりあえず……夜のつまみ食いは太る元だよ二人とも?