からだが、ぽかぽかする。
(ん、みぅ……?)
ふと気が付くと、ボクは布団に寝かされていた。
あれ。
ここ、どこだろう?ぼく、バーでのんでて……それから――?
「大丈夫か、エミ?」
「ん、ぁ……うぃる、にぃ?」
「酒の飲みすぎは身体に毒だぞ、程ほど適量に、な。
ノラがびっくりしてたぞ?……水、飲むか?」
霞がかかったような視界の中で、どこからか、ウィル兄の声が聞こえた。
(……これ、夢の続き、なのかな?)
うん、きっとそうだ。
ウィル兄は今凄く忙しいはずだし、ボクなんかの為に時間を割く暇もないはず。
だから、これはきっと……夢の中なんだ。ボクの都合の良い、夢。
(……あんなこと、考えたのに)
何もかも忘れようだなんて。心ごと壊れてしまえば、いいって。
バーでそんなこと思ったのに、まだ、ウィルはボクに優しくしてくれていて。
(ボクは……)
此処にいちゃ、いけないのかもしれない。
このままじゃ。ボクも、彼も――それだけじゃない、見知ったみんなに……。
(……)
それなら……そうだ、ボクがここからいなくなれば。
誰も、苦しまない。誰も、困らない。ボク以外誰も――イヤな思いをしなくて、済む。
みんな、一緒に居られる。
(でも……)
諦められるのか、ボクは?
顔を合わせても、想いを伝えられない毎日。そんな日々に、ボクは耐えられるのか?
ボクの中のひび割れた隙間が、ギシリ、と軋みをあげる。今まで、意識的に、また無意識に押さえ込んで押し殺してきた、様々な思い。
歯を食いしばって、耐えようとして……結局、隙間から後から後から溢れて、自分を慰めて治めるしか術のない、そんなボクに。
「……大丈夫か?」
そっと、額に大きな手が触れられる。彼の、大きな手のひら。
いつも、安心を与えてくれていたその手のひらが、今のボクには酷く、辛くて。
でも、それを否定する勇気も、なくて。
「……うん、アリガト」
ボクは、目を閉じてそう言うのが精いっぱいだった。
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