Cross Point
5th Night...[ホントウノキモチ]



 




紅い瞳と、紅い髪。
あまり見かけない、ゆったりとしたデザインの、黒いストーリアを身につけて。
彼女は壁に背を預けて、静かに、そこに佇んでいた。

(ぁ……)

こちらを見て、ちょっとほっとした様な、来て欲しくなかったとがっかりしたような……そんな複雑な表情を浮かべる彼女。

「……機動警備部3課所属、ティル・ベルクラントだ。 ご協力に……感謝する」

あぁ。
覚えてるよ。
その、声も。姿も。

(ルシーダ……やっと、会えた)

無事だった彼女の姿に、抱きしめたい思いに駆られるけれど……。
彼女はきっとボクの事、覚えていないだろうから。
いろんな感情をぐっと堪えて、出来るだけ笑顔で答礼を返す。
思い出してもらうのに、時間はたくさんあるはずだから。

「……、機動警備部3課4班班長、エミーナ・ハーヅウェルです。 協力要請を受理しました」
「貴女は都市部での戦闘経験が豊富だと聞く、それを今回の任務にぜひ助力いただきたい。
 あの事故以来、どこからか様々な生物が……ここに流入しているようなのでな……」

言って、彼女はふと何か気づいたように眼を細め。
……すぐにその表情を消してしまった。
なんだろう。
覚悟をして来た筈なのに、酷く胸騒ぎがした。とてつもなく……嫌な、感じの。

「行こう」
「了解」

現在位置と大体の経路を二人で確認し、ボクらはゴーストタウンと化した廃墟の街へ、一歩を踏み出した。