「遅かったじゃないか、ティル・ベルクラントぉ?ほぅ、"オトモダチ"も一緒かぁ?感心感心」
独特の抑揚をつけた、太い男の声がした。
声の主の外見は、一見えらくユーモラスだった。ぬいぐるみのカバのような丸いフォルム、背中には黄色いラッピー型のリュックを背負っている。
それだけに、そいつが両手に握るツインセイバー、ツーヘッドラグナスが剣呑な違和感を湛えていた。
「……何故、お前が……ここに?」
ルシーダが、小馬鹿にしたような男の声が掛けられた途端、呆然と立ち止まった。
ボクもまた"あの時"の空気に触れ、足が止まる。前に足を進められない、と言った方がいいだろうか。
凄惨を濃密に纏い、"あの時"の雰囲気そのままに……"ソレ"は居た。
「何故?意外でも何でもないだろぅ?
駐在した以上は部下を心配するものだ、違うかぁ?」
一見普通のGH490。
だが……小柄なその姿から放たれる、最早隠そうともしない殺気。そして、血の、匂い。
酷く嫌な予感が、今目の前で的中してしまった事を確信した。
こいつは、"アイツ"だ。ボクとルシーダを引き剥がした、"あの時"の――レンヴォルト・マガシ。
「クク……では、楽しい楽しいショーの始まりと行こうじゃないか…こいつを血祭りに上げて、なぁ!!」
そう言って、490が指で指し示したのは……ボクの事だった。
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