Cross Point
5th Night...[ホントウノキモチ]



 




「……そんな」

490から語られたこと……信じたくなくて、違うと言って欲しくて。
ボクは、震える声でルシーダに語りかける。

「嘘だよね……?嘘だって…言ってよ。コレが……キミが望んだ事だっていうの?」
「……あぁ、そうさ」

肯定されて……後頭部を殴られたようなショックがボクを襲った。
そんな、事って……。
せっかく、せっかく会えたのに。こんなのって……ないよ。

「どうしたぁ、ティル・ベルクラント?
 貴様が終わらせないのであれば、俺が終わらせるまでだが?」
「……いや、僕にやらせてくれ。決着は、この手で付ける」

すこし青ざめた表情で、手に持つ武器をゆっくりと引き上げて。
ゆらり、とこちらを振り向くルシーダ。

「後はないよ、エミーナ・ハーヅウェル……君は、ここで死ぬんだから。覚悟はいいか?」
「ティル……お願い、目を覚まして!!」

無駄だとわかってはいても、そう叫ばずにはいられない。

「ボクは、キミとなんて戦いたくなんてない!誰も、こんな事望んでなんていない!」

「目を覚ますのは君の方だ。
 ……本当に馬鹿だな、君は。まさか、一人で僕の目の前にのこのこ姿を現すとは……」

瞳に映る色は、狂喜か、狂気か。いずれにしろ、彼女には迷いがないようだ。
なんで……なんで、こんなことに。
全身の血が一気に逆流するかのような焦燥と失意の中で、ボクは奥歯を噛みしめて必死に耐える。

「……ッ、……やるしか、無いみたいだね」
「ふん、一人で何ができる?何秒耐えられ――」
「490。こいつは、僕の獲物だ」
「ふん?今更だなティル・ベルクラント、あれだけの失敗を重ねてどの口が言うのだ!?」
「聞こえなかったか?こいつは、僕の獲物だ。邪魔をするな!!!!」

490を一喝し、こちらへ振り向き。ちろり、と舌なめずりをして。
ルシーダは、ボクに宣告を下す。

「君は、僕が斃す。僕だけに、ね。さぁ、いくよ?」
「――来いッ!」

彼女が放ったその一言が、愉悦を含んだその声が、戦いの火蓋を切った。