相変わらず、物々しい警備体制の病院の中を顔パスで通り抜け、目的の部屋の前が見えてくる。
隊長と、ルシーダの部屋の警護についていたキソヴィがボクの様子に苦笑しているように見えたが、ボクはそれに気付かない程に緊張していた。
扉の前で、大きく深呼吸を2、3回。
(よしっ)
とんとん、と軽くノック。
「どうぞ……開いてるよ」
ビジフォンで聞くのと同じ、落ち着いた声が響く。
「……久しぶり」
「うん、久しぶり」
スライドドアを開き、にっこり笑ってそう告げて―
お互い、どんな顔をすればいいか分からなくて苦笑いする。
やがてルシーダが微苦笑のままで、ぽんぽん、とベッドの上を軽く叩いた。
隣に座って、って事らしい。
ベッドに腰掛け、ルシーダに顔を向けたところで。
すっ、彼女の手がボクの肩に伸びる。
「エミーナ……会い、たかった……ずっと」
「わっ?」
いきなり、ぎゅって抱きつかれた。
不意の行動に、頭の中が真っ白になる。
暖かな、ルシーダの身体と、途切れ途切れに聞こえる、ボクを呼ぶ声。
(ルシーダ……)
ウィルに感じる愛情とは、また違ったベクトルの愛しさに胸がいっぱいになって、ボクも抱きしめ返す。ただ、ルシーダという存在が此処に居てくれるのが、嬉しくて……愛しかった。
本当に、本当に……生きててくれて、よかった……。
「最初から、こうしていればよかった……」
「うん……そだ、ね」
言葉なんて、最初から不要だったんだ。
暫くボクらはしっかりと抱きあい……無言のまま、お互いの体温を、存在を確かめ合っていた。
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