Cross Point
Epilogue...[ハジマリノ、オワリ]



 


「それで、その"賭け"、了承しちゃったのにゃ?」
「うん、特に問題もないかなって思って」

翌日。
謹慎中でも施設はリハビリも兼ねて使ってよし、とのお触れが出たので、早速ボクはクライズ・シティ・ガーディアンズ隊員寮の一角にあるトレーニングルームで、ノラと一緒に訓練しながらルシーダとの事の顛末を話していた。

「にゃ〜……エミにゃ、それってアブナいかも、にゃ?」
「え?あくまで訓練形態だし、武器だって訓練用だし、危険な事は……」
「あぁ、そう言う意味じゃにゃくて。今のルシにゃはもう危険な思考は持ってないはずにゃ。でも、エミにゃに対しては、もっと別の……」
「……?」
「エミにゃ……。
  のれんに腕押しって言われるだけの事はあるのにゃね〜、ルシにゃも苦労するにゃ……。エミ姉が、もーちょっとそっちの感覚が……ノラだって……ブツブツ」

ノラは苦笑して溜息を一つ。

「はふ……とりあえず、エミにゃが鈍感だって事がよーくわかりましたにゃ」
「え、ええぇ?!」
「自分に向けられる好意に鈍感過ぎるってのも、割と問題だと思うにゃよ?」
「う……」

全く分からない訳じゃ、ない……と思う。
ノラは言うに及ばず、ルシーダとだって仲良くなれそうだし……その、ウィル兄とも、分かりあえて……。
と、そこまで今までの事を思い返し、確かに自分から動いていない事に気が付いて、そうかもしれないと内心頭を抱えてしまった。
ノラのツッコミは、的確で人をよく見てるなぁと思う。

「にししッ、そのウィル兄とは、その後どうですにゃ?」
「えと……いつも優しくしてもらって……って、ノラが何故それを……?!」
「んふふ〜。その反応って事は、噂はほんとだったのにゃね?」

まずい。なんだか、すんごくまずい、気がする。
チェシャ猫の様に微笑むノラの表情に、ボクはまるで壁際に追いたてられたネズミのように狼狽して、防戦一方だ。

「な、なんの、ことカナー?」
「誤魔化したって無駄にゃよ、エ・ミ・姉?
 この間の夜、ウィル兄とぉ……」
「!?ひういlぴgyくあせおhぴgb@ふじこ;」

な、なんでノラがそこまで……?!
自宅だったし、あの時ボクら二人以外は誰もいなかったしッ……シンクはあの後寝込んでるし、フィグは家出してるし……!?
張った積もりの心の防衛線もあっと言う間に突破されて、ボクは白旗を上げざるを得ない。
あぁもぅ、降参だよ、降参。苦笑いのボクに、ノラはしてやったり顔だ。

「ぷくくっ、エミ姉は隠し事が苦手にゃね〜。全部顔にでてますにゃ……」
「うぅ……ノラにはかなわないよ。……そいえば、その噂って誰から聞いたのさ?」
「ん、フィグにゃに聞いたにゃよ?」
「えっ?!フィグは今家出中で……」
「あの子なら、ノラの家でお留守番《ヒキコモリ》してるにゃ〜」
「えぇっ?!」

連絡もせずにあの娘はぁ。帰ったらお仕置き大決定だ。
まぁ、それはともかくとして、当面の問題を解決しなければ、と思ったのだが。

「えと、ノラ、あんまりこの事は……」
「大丈夫、ノラとエミ姉の間の秘密だよ。……まぁ、噂流れちゃってるし、みんな遅かれ早かれ気付くと思うけどネ……」

……時既に遅し、らしい(涙

「あぅ……と、とりあえず、戦闘訓練付き合って!」
「はーいはい、にゃ♪」

この後、お互いつい本気になった挙げ句、逆にノラにコテンパンに伸されたのはここだけの秘密だ。
その後はボクの戦闘の癖や、武器を振るう時の隙を色々指摘してもらって実演。動きを繰り返して、堅くなった身体に動きを少しづつ染み込ませていく。
……ホント、友人としても教官としても、ノラには当分かないそうにないや。

そして、めでたくボクの謹慎期間が終了した1ヶ月後。
その時がやってきた。