:XDay -2h00m "ウゴキダスジカン" 
 
 
Cross Point



 



「うぃる…兄、も…邪魔しにきたの?」
「…エミ?」
「…もう嫌…痛くて、寒くて…苦しいのはもう嫌っ!」
「エミ、落ち着け!」
「疲れちゃったよ…。
 こんな思いをさせる為に…ウィル兄はボクを助けたの?そうなんでしょ?」
「お前、何言って…」
「だって、そうでしょ?
 過去を知る必要はないって言ったのは誰?
 今まで隠してたのは誰?」

何言ってるんだ、ボク?

「それは…お前のためを思って…」
「…だったら、ボクはいったいどんな立場なのさ?」

止まらない。
黒いわだかまりが、濃縮され、凝縮され…明確な敵意として、彼へと吐き出される。

「…」
「言い返せないよね?
 所詮、ボクが妹だって逃げてるんでしょ?
 ボクの気持ちなんて知らないくせに…。
 どれだけボクが待ってたか、どれだけボクが切なかったか…どれだけボクが…泣いてたか!」

今まで無意識に、意識的に抑え込んできた、様々な思い。
一端破裂した勢いは、圧力が下がるまで収まらない。

「ボクは…ただの哀れな孤児娘?
 それとも…同居してるだけで関係もない赤の他人?
 女としてすら見てくれないの?いくじなしっ!!!
 分かんないよ…そんなの、全然分かんないよぉっ!!」
「…」

あぁ…そっか。
皆を傷つけたくなくて。
周囲からの期待を、裏切りたくなくて。
皆に笑っていてほしくて。
でも、その裏で自分を…切り捨てられなくて。
そんな自分が嫌い…そう、大嫌いだったんだ。
それが、分かった。わかって、しまった。

そこまで思い至って、熱かった頭の芯がすぅっと冷えて…思考がクリアになり。
今まで、彼に言ってしまった事に、血の気が引く。

(結局、自分の欲望で動きたかっただけでしょ?)
(子供だよね)
(そんな奴が、ウィルと釣り合うと思ってるわけ?)
(おまえに、そんな覚悟がどこにあるんだよ)

いろいろな声が、ボクを苛んでいく。
痛い…寒い…一人は、イヤだ…。

でも、一番助けてもらいたい人は…もう助けてはくれない。
当たり前だ。
ボクから、"今"を全力で否定してしまったのだから。

「エミーナ!お前、言って良いことと悪いことが!」

殴られる。
そう思ったし、そうされてもいいと思った。
恩を徒で返すような、それだけ酷いことを言ったのだし…ボクがここで、想いを諦められれば、誰も困らない。
ボク以外誰も―イヤな思いをしなくて、済む。
みんな、一緒にいられる。
そう、これで…これで、いいはずなんだよ、ね。