「うぃる…兄、も…邪魔しにきたの?」
「…エミ?」
「…もう嫌…痛くて、寒くて…苦しいのはもう嫌っ!」
「エミ、落ち着け!」
「疲れちゃったよ…。
こんな思いをさせる為に…ウィル兄はボクを助けたの?そうなんでしょ?」
「お前、何言って…」
「だって、そうでしょ?
過去を知る必要はないって言ったのは誰?
今まで隠してたのは誰?」
何言ってるんだ、ボク?
「それは…お前のためを思って…」
「…だったら、ボクはいったいどんな立場なのさ?」
止まらない。
黒いわだかまりが、濃縮され、凝縮され…明確な敵意として、彼へと吐き出される。
「…」
「言い返せないよね?
所詮、ボクが妹だって逃げてるんでしょ?
ボクの気持ちなんて知らないくせに…。
どれだけボクが待ってたか、どれだけボクが切なかったか…どれだけボクが…泣いてたか!」
今まで無意識に、意識的に抑え込んできた、様々な思い。
一端破裂した勢いは、圧力が下がるまで収まらない。
「ボクは…ただの哀れな孤児娘?
それとも…同居してるだけで関係もない赤の他人?
女としてすら見てくれないの?いくじなしっ!!!
分かんないよ…そんなの、全然分かんないよぉっ!!」
「…」
あぁ…そっか。
皆を傷つけたくなくて。
周囲からの期待を、裏切りたくなくて。
皆に笑っていてほしくて。
でも、その裏で自分を…切り捨てられなくて。
そんな自分が嫌い…そう、大嫌いだったんだ。
それが、分かった。わかって、しまった。
そこまで思い至って、熱かった頭の芯がすぅっと冷えて…思考がクリアになり。
今まで、彼に言ってしまった事に、血の気が引く。
(結局、自分の欲望で動きたかっただけでしょ?)
(子供だよね)
(そんな奴が、ウィルと釣り合うと思ってるわけ?)
(おまえに、そんな覚悟がどこにあるんだよ)
いろいろな声が、ボクを苛んでいく。
痛い…寒い…一人は、イヤだ…。
でも、一番助けてもらいたい人は…もう助けてはくれない。
当たり前だ。
ボクから、"今"を全力で否定してしまったのだから。
「エミーナ!お前、言って良いことと悪いことが!」
殴られる。
そう思ったし、そうされてもいいと思った。
恩を徒で返すような、それだけ酷いことを言ったのだし…ボクがここで、想いを諦められれば、誰も困らない。
ボク以外誰も―イヤな思いをしなくて、済む。
みんな、一緒にいられる。
そう、これで…これで、いいはずなんだよ、ね。
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