:XDay -2h00m "ウゴキダスジカン" 
 
 
Cross Point



 



「違う…」
「何が違う?!」
「ごめん…、ごめん…なさい…。違うの…ボクは…ボクは…ぁ」

ダメ…限界。もう、隠すの…無理。
涙があふれ、こぼれて…止まらなくなって。
こんな顔、見せられなくて。俯いたまま、しゃくりあげながらボクは謝り続けた。
そんなことで許してくれるとは、思えなかったけれど。
こんな時に、最愛の人を傷つけるような事しか言えない自分が悲しくて、ムカついて。

(あぁ……、ボク、は……)

結局"あの時"から、ボクは全然変われてなんていなかった。
そんな自分が情けなくて。
でも、謝る事しか、できなかった。

「ボクは…ただ…」

言っちゃだめだ。
"今"を壊すどころか、居場所すら無くす気か?!
"ボク"がボクじゃ居られなくなるんだぞ!
僅かに残った理性が訴えかける。
でも…

「ただ…」
「ただ?」

さっきとは違う、静かな彼の声に。
先を促されるように、熱い塊を吐き出すかのように、ボクの口から、言葉がすべり出す。

「…嫌…く…ない…」
「うん?」
「ウィルに…嫌われたくない…」
「エミ?」
「でも…みんなの、今の関係を、壊したくない…」
「…」
「ボクね…ウィルのこと、好き。
 でもね…みんなのことも、好き」
「お前…」

驚いたような彼の声音。
それが聞こえない振りをして、ボクは言葉を続けた。

「ボクが、ウィルのこと好きって言ったら…みんなに迷惑が掛かって…一緒にいられなくなっちゃうよね?」
「エミ…」
「それは、イヤ…。
 みんなと一緒に居られなくなるのは…イヤだ。
 ウィルだって…"妹"からそんなこと言われたら、迷惑だもんね?」
「…」
「だから…嫌われれば、少なくともみんなとは…一緒に居られると思ったの…」

自分から望んで、関係を壊し。
居心地のいい場所すら、壊してしまった。
もう二度と、前には戻れないし…戻せない。
言ってしまった事の重大さに、後悔の念が押し寄せて…ボクはその場にへたり込んでしまった。

「でも…
 嫌われるのは…嫌だ…嫌だよ…ウィル…。
 ボクのこと、嫌いにならないで…一人はイヤ…!」
「…」

何も言ってくれない彼。
怖くて、顔が上げられない。
…一人で、しばらく頭を冷やそう。
どのみち…ボクはもう、此処にいられない。

「…ボク、寮に帰るよ…ごめんね、ウィル兄。
 これ以上、ここに居たらもっと迷惑掛けちゃ−」
「…エミーナ…!」

急に抱きしめられた。
骨が折れそうなくらい、ぎゅって。

「ひ、ぁ…!?」

息ができなくて、胸が詰まって。
呼吸する事すら忘れて、ボクは硬直したままだった。