熱いシャワーを浴びて、昨夜の余韻をリセットしていく。
どことなく、まだ身体が熱を帯びてるように感じたから。
「はふ…ぁ…」
昨晩…ウィルと。
しちゃったんだ…よね。
昨夜の事をつい思い出してしまって…身体の中心の鈍い痛みを意識して。
鏡に映る自分の身体に、所々に出来た小さな痣に目が止まってしまい。
「ん…っ」
とろ、と流れ出る感覚に思わず悪寒の様な震えを覚えて。
「あぁ、もぅ…」
どことなくギクシャクしながら、振り払うように首を振り、頭からお湯を被る。
…引きずり過ぎ。今日は仕事だろ、しっかりしろよボク!
バスルームを出て、湿り気を拭った髪をリボンで手早く纏め。
痣が目立たぬようにスポーツタイプの下着を身につけた所で、端末腕環が呼び出し音を奏でた。
「ん…こんな時間に?」
差出人は…ティル・ベルクラント。
「…ッ!!」
その差出人の顔写真が目に飛び込んだ瞬間、眠気も何も吹き飛んだ。
何度も確認するけれど…間違いない。
…この間、シンクに聞いたボクに"そっくり"な娘。
おそらく―ボクの唯一の…血の繋がった人。
その彼女からの、ガーディアンズとしての正式な要請だった。
『旧ローゼノム・シティの被害状況偵察、及び流入した生物の排除・駆除依頼』
内容は簡潔で明快。
特に変な点も見受けられないし、データとしても真っ当なものだ。
でも。
「…」
心のどこかで、止める声がする。
これは罠だ、と。
今までの出来事に対して、少しナーバスになってるだけなのかもしれないけれど…。
「危険だとしても…」
ボクは、行かなくちゃ。
今行かなかったら、あの子に二度と会えなくなりそうな予感が、強くしたから。
今回ばかりは、この悪い予感が―これがよく当たるんだ…―外れるのを願うしかない。
…いや。会うだけじゃないだろう?
自分の頬をバシッと叩き、気合いを入れる。
(そんな弱気でどうする、エミーナ!
ボクはルシーダを…取り戻すんだ。そう、絶対に!!)
気持ちが固まれば、後は驚く程早かった。
色々な事態を想定して動きやすくて、汚れても気にならないような格好に着替え。
武装は…狭いところでの戦闘も考慮して、ファイガンナーとして実力が発揮できる装備で。
プロテクタ代わりのシールドラインは、乱戦を考えて回避重視。
メイト系薬品は…うん、足りてるね。
「ウィル、…ごめんね。行ってきます」
物音を立てぬようにそっとドアを閉じて。
ボクは愛機のエア・バイクのエンジンに火を入れ、煽り気味にスタートさせた。
|