「な…にっ?!」
490が心底意外そうな声を挙げた。
…ルシーダは自分の武器で、ツーヘッドラグナスを受け止めていたのだ。
ギシリ、とその槍が異音をあげるが…耐え切った!
「エミーナ、今だ!」
「…ッ、たああぁぁああっ!!!」
ルシーダのくれた隙を狙って、瞬時にショートカットラックからナックルを選択。
全体重を掛けて、狙うは…490の頭。この一撃で終わらせる!!
「ちぃっ!」
多勢に無勢は不利と判断したのか、ルシーダを弾き飛ばし、バックステップで後方へ490が逃げる。
不意討ですら…当たらないのか。
「裏切り者には死、あるのみ…。組織を害する物は全てにおいて優先的に排除される。
罪は償ってもらうぞ、ティル・ベルクラント、エミーナ・ハーヅウェル!!」
490の怨嗟の声と共に、周囲に複数の気配が一斉に湧き上がる。
数は…4、これで5対2。
ルシーダと互いに背中合わせとなり、周囲の「敵」を見据える。
「…気をつけろ、こいつらは"デリータ"だ」
「デリータ?」
「組織に不利益を与える物全てを隠滅・破壊する集団のことさ…」
ルシーダの言葉尻が、震えているのが分かる。
危険な連中には変わりないだろう。
でも。
「ティル…行ける?」
「エミーナこそ…僕のスピードに遅れるなよ?」
「うん、できる限り頑張るよ」
彼女らしい物言いに、自然と笑みが浮かぶ。
うん、ボクは大丈夫。
「そうだ…エミーナ」
「ん?」
「さっきの勝負、預けて置く。
それまで…僕以外の誰かに倒されるなんて、許さないからね?」
「…大丈夫。
キミが、ティルが居てくれるなら」
本心からの言葉。
ルシーダ、キミと一緒なら大丈夫。そんな気がするよ。
ちらり、とルシーダがこちらを見る。ボクも、見つめ返す。
曇っていた光が、徐々に晴れていくような、そんな瞳だ。
大丈夫。なんとかなる、何とかして…みせるさ。
「…僕か君かが倒されたら、僕らの負け。包囲網を倒すか抜けるかすれば、僕らの勝ち、だ」
「分かった、ティルに任せる。ボクは援護するよ」
「…頼りにしてる」
…うん、任せて。
彼女の言葉に、ボクのココロの中の何処かに、火が点る。
ルシーダの願い、ボクの願い。
同じとは言い切れないだろうけど…ボクは二度と、"家族"を手放したくないから。
「お友達ゴッコは終わったか?
では、楽しい楽しいショーの始まりと行こうじゃないか…貴様らを血祭りに上げて、なぁ!」
490の哄笑と共に、一斉に奴らが動き始める…!
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