「甘いっ!!」
「そう言う割にコンマ数秒遅れているなティル・ベルクラント?」
「うるさいっ!!」
襲い来るフォトンビームを大型の槍で弾き返し、更に正確無比な高速の突きを繰り出す。
ルシーダの戦い方は基本に忠実だけど、忠実なだけに再現は難しいし、避けるのも困難で。
援護すらボクにはできそうもない…無理に入れば、やられるのはルシーダの方だ。
(さっきのは、やっぱり…)
だいぶ手加減をしてくれていたんだろう。
さっきは何とか速度を見切れていたけれど…今はそれすら出来ない。
ルシーダの持つ槍の実体刃の剣先が雲を引き、緑色のフォトンが残像を描いて、490のツーヘッドラグナスとぶつかり、退け、再び叩きつけられる。
片手持ちの剣に両手持ちの槍で渡り合うなんて…彼女、どれだけの膂力を持っているのだろうか。
(だったら、ボクに出来ることは…)
助けに入れないのであれば、周囲の邪魔者を排除すること。
まずは、数を減らすことが先決だ。
「…機動警備部、"隕石"の二つ名の実力…見せてあげるよっ!」
戦い方が大味だと、誰かは言った。
ニューマンの癖に前に出てくるな、とまた他の誰かは言った。
でも、ボクにはこれしか出来なかった。
ボクはニューマンだけど…フォトンを統べる力もなく、ビーストのように圧倒的な力もない。
でも、誰かを守りたいと思う心は人一倍あるつもりだったから。
(今は…ルシーダを、守る!!)
PP残量、フォトン励起状態、共に問題なし。
確認し、目の前のスマートライフルを構えた青ずくめのキャストへと突進する。
銃口を向けているのに向かってくるとは思わなかったのか、咄嗟に撃つか間合いを取るかを迷った相手は、一瞬固まった。
「1!」
勢いを殺さぬままに脇を通り抜けると同時、相手の両腕を切り飛ばし。
その腕が地面に落ちる前に、別のキャストを弾き飛ばし、切り込み、連撃からクレアダブルスを地面に突き立てて蹴り飛ばす。
「2!」
壁にぶつかり動かなくなったことを視界の端に捕らえながら、僅か2体でPP残量僅かになったPPカートリッジを廃莢して、再充填。
弱まっていた紅いフォトンブレードの輝きが、再び増していく。
「彼女は…誰にも傷つけさせない…もう二度と!!」
あの時感じた痛みと、決意と、助けたいという想いと、信頼してくれた嬉しさと。
ごっちゃになって、身体が、心が熱かった。
ウィルと一つになれた今なら、分かる。
人を大切に思う気持ち、愛するって気持ちは…何倍にも大きなチカラになるんだって。
「…ッ!!」
突然背後に殺気が膨れ上がる。
総毛立ち、振り向くと其処にいたのは―紅い影…レンヴォルト・マガシ!?
何故ここに?いつから?
「であれば、だ…奴が死ねば、何も問題なくなるのだな?」
ズラリ、と二本の片手剣が抜かれ。
「なぁ、エミーナ・ミュール?」
ニヤリ、と嫌らしい笑みを浮かべる。
心中に沸いた思いと裏腹に、ボクは反射的にルシーダへ向かって走って、叫んでいた。
「ルシーダ、避けてえぇっ!!」
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