「信じられませんね。
戦闘中、しかも相手に背を向けて、失礼ながらこの程度の怪我で済むとは…」
夕方、担当医はボクの肩の様子を看ながらこんな事を言った。
ボクが再び目を覚ましてから数時間。
その間、検診を受けたり、ウィルやアム姉に怒られたり、キソヴィやエノっちに苦笑されたり、ガーディアンズから服務規程違反で謹慎(という名の休暇)を食らったり、事情聴取で質問責めにあったりしながら、ボクは半分上の空で過ごしていた。
「と、いうと?」
「レンヴォルト・マガシと言えば…ツインブレードの相当な使い手だったと聞いています。
並の腕では…そんな手練に背を向けたが最後。背中からバッサリやられて一撃でしょうからな」
「……」
そう、あの時ボクは"避ける気で"いた。
"避けられる"と自然に思っていた。でも。
「実際は、このザマですけど…」
「確かに出血は酷かったですが…神経や骨格は綺麗に避けてましたから。
傷はうっすら残るかも知れませんが、後遺症は残らないと思います。
さすがは"隕石"の二つ名が付く方だけの事はありますよ」
「そんな、ボクは大したこと…」
言い掛け、口を噤む。
また、助けてあげられなかった。
だから。
その言葉を発することすら、ボクは許されないはずだから。
(ルシーダ…)
早く、会いたいよ。
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