:XDay +15"ヒカレルココロ" 
 
 
Cross Point








「ケイさん…いえ、コリンズ統合調査部・情報処理課長に折り入って相談があります」
「なに、改まって?」
「ティル・ベルクラントの件ですが。
 ボクを…、私を彼女の身元引受人にさせてもらえないでしょうか?」

何を言い出すかと思えば、とケイさんは苦笑して一蹴する。

「いきなり何を言い出すの?
 あの娘は殺人未遂、器物損壊、テロ法違反…立派な被疑者よ?
 しかも、秘密結社"イルミナス"の重要参考人。
 その彼女に命を危険に晒された被害者-あなた-が、被疑者の身元引受人になるなんて、認められるわけないでしょう。
 鴨が葱背負ってまな板の上に居るようなものよ?」

まぁ、至極当然の話だ。
端から見れば誰だって馬鹿げた話だと、そう思うに違いない。
でも、ここで言っておかなければ…ルシーダは。
ケイさんの言葉を半ば無視して、ボクは続ける。

「情報部としては、貴重な"イルミナス"の情報源。
 あれだけ手痛い被害を被ったガーディアンズとしては、どんな手を使ってでも情報が欲しいはず、ですよね。
 それこそ悪名高き"ブレイン・リーダー"を使ってでも根こそぎ引きだそうとするでしょう。
 しかしあれは、下手を打てば装着者が命を落としかねない、危険なシロモノだと聞いてます。
 …彼女は被疑者である前に、一人の人間です。
  しかも、彼女はそう生きざるを得ない環境だった。酌量の余地はあると思いますが?」
「まぁ、それはあるでしょう。でもそれと犯罪捜査とは話が別だわ」
「では…"正義"の為に、疑われている人間を、情報と引き替えに犠牲にするお積もりですか?
 コリンズ課長は実質上の"殺人"を、黙認すると仰るのですか?
 法って物は…生きる事に苦しんでる人、一人すら救えないんですか?」
「……。
 ハーヅウェル班長、言ってる意味…解ってるの?
 発言次第によっては、貴女を公務執行妨害で逮捕しなければならなくなるわよ?」

『脅しは、相手が交渉のテーブルに乗ってくれたと同義』
いつかウィルが言っていた事を思い出した。
言葉を選びながら、ボクは慎重に、ルシーダの明日を紡ぐ事に専念する。

「私は至って冷静ですよ、情報処理課長殿。
 以前私も調査部に出向してましたし、情報が何より大事って事位わかります。
 ただ、彼女が狂信的な暗殺者だったとして…。
 目標が目の前に居ながら、緊急避難的にしろ助け合ったりするとでも?
 経緯は、キロ隊が一部始終見てたはずです」
「…確かに、その報告も彼から受けたわ。
 しかし、それすらも彼女の演技かも知れない」
「そうかも知れません。
 でも、ボクがそこで彼女を見限っていれば、そこで糸は途切れます。狙っていたとしても、確率は低いかと」
「ふむ」
「それに。
 たった数時間ではありますが、一緒にいた私には彼女は回復の余地ありと思えました。
 回復を待って、他の方法を探るのもありなんじゃないでしょうか?」
「では、その彼女を助ける事で他の事件が起きたとしたら?貴女は責任を取れる?」